ザ・クインテッセンス1月
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95子どもたちにどんな歯科医療を提供できるか われわれの仕事は,長期にわたって1人の患者とつながりをもちつづけることができる,医療のなかでは特異な分野である.地域で開業する一般的な歯科医院であれば,乳歯列の乳幼児から無歯顎の高齢者まで幅広い年齢層の患者を対象に歯科医療を行っている.一般医科と同様に,口腔内に起こる疾患や障害を対象にしていることには間違いないが,近年では健康な状態を維持する予防のために来院する患者も増加しており,1人の患者と長期にわたってつながりをもつ機会が多くなっているのである. 母親が,「子どもを乳幼児の頃からむし歯にさせたくない,歯並びが良くなるようにしたい」などの希望をもって通院を始め,その子どもが一度も治療することなく永久歯列になっていくケースが多くある.そのような子どもたちにとって歯科医院とはどんな場所で,歯科医師とはどのような存在なのだろうか? 今まで歯科医院といえば「痛い,怖い」というイメージで捉えられることが多かったが,そのように通院していた患者の母親からは「うちの子は歯医者に行くのが好きなんです」などといううれしい言葉を聞くこともある.しかし,そのような親の願いで通院が始まり,たとえ歯科医院が子どもたちにとって楽しい場所になったとしても,う蝕がなく歯並びが良くなるという結果をわれわれが提供できなければ,医療として意味のないものになってしまう. 口腔の健康を獲得し,それを維持していくことが全身の健康維持に大きくかかわることは明らかであり,一般的にもそのように認識されている.その出発点である健全な永久歯列を子どもたちに獲得させることは,われわれにとってとてもやり甲斐のある仕事であり,達成可能な目標なのである. 本連載(全6回:1・3・5・7・9・11月号掲載予定)を通じて,地域の一般歯科医院でのその取り組みを紹介していきたい.須貝昭弘キーワード:子ども,不正咬合,正常咬合,成長発育,超高齢社会子どもたちをう蝕・不正咬合から守る!1正常咬合への道のり神奈川県開業 須貝歯科医院連絡先:〒212‐0016 神奈川県川崎市幸区南幸町2‐8‐1 オーベル川崎101号連載the Quintessence. Vol.31 No.1/2012̶0095

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