ザ・クインテッセンス1月
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140安全・安心な歯科医療を提供するために 歯科治療には,侵襲の程度の大小を問わず,偶発症が起こる危険性がつねに付きまとっている.とくに,全身的偶発症が発生した場合には,重症化することもあり,ときには死に至ることもある.国民に対して歯科医療を提供する立場の者として,そのような悲惨な事態に陥ることだけは,極力避けなければならない. 全身的偶発症を起こさないためには,「高齢者や全身疾患をもっている患者に気をつけておけば大丈夫だろう」と考えがちである.しかし,実際には,幼児から高齢者まですべての年齢層に渡って全身的偶発症は発生している.意外なことに,20歳代から40歳代にもっとも多く起こっている.さらに,その過半数は,何も全身疾患の既往がない健常者に発症している.つまり歯科医師は,「全身的偶発症はどんな患者にも起こりうる」ということをつねに念頭に置く必要がある.ただし,実際に歯科治療を受けている年齢別の患者数や,基礎疾患のある患者の数を考慮に入れると,全身的偶発症が高齢者や全身疾患のある患者において発症する割合は,若年者や健常者におけるそれよりも高くなるのかもしれない.いずれにしても,現代のような超高齢化社会において,インプラントなどの侵襲的治療が日常的に行われている現状を考えれば,全身的偶キーワード:全身的偶発症,一次救命処置,心肺蘇生法,歯科治療怡土信一/横山武志九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座歯科麻酔学分野連絡先:〒812‐8582 福岡県福岡市東区馬出3‐1‐1The Essential Knowledge of Accidental Emergency in Dental Clinic and Guidelines for Cardiopulmonary ResuscitationShinichi Ito, Takeshi Yokoyama誰でも実践できる歯科医院における救命救急処置基本事項マスター編 1知っておきたい基礎知識歯科医院における全身的偶発症と救命救急処置ガイドライン連載にあたって誰the Quintessence. Vol.31 No.1/2012̶0140

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