ザ・クインテッセンス2月
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今日のTOPIC今,臨床の現場で求められることは?87 日本は現在,“多死時代”が到来している.多くの国民が亡くなる時代である.日本人の平均寿命が長くなると同時に,人口の高齢化が進み,とくに後期高齢者といわれる75歳以上の高齢者が増加し,年間の死亡者数は100万人を超えるまでに至っている.今後も死者数は増加を示し,2025年には160万人に達するといわれている.死にゆく人たちの増加は,医療や介護の問題を招き,社会保障費などさまざまな問題への対応が早急に求められている. 一方,高齢者とくに後期高齢者の残存歯の増加は著しく,現在8020達成者は30%に達している.また,現在70歳台の高齢者の20歯以上を有する者の割合は約50%であり,今後ますます増えることが予想されている.“多歯時代”の到来である. 最近,多くの報告が,残存歯を多くもつことの優位性を裏付けている.Fukaiら1は,5,000人以上に及ぶ膨大な地域住民のデータから,残根などを除いた咬合に関与する機能歯数が多い者ほど,肩の痛みや不眠,耳鳴り,聞き取りにくさなど,さまざまな体の不調を訴えないことを示している(図1).さらに,Yoshidaら2は,転倒事故との関連に注目し,天然歯による咬合支持を有する者や義歯により咬合支持を回復している者に転倒事故が少ないことを示している(図2).さらに,身体機能や心理キーワード:多死・多歯時代,口腔ケア,器質性咀嚼障害,運動障害性咀嚼障害菊谷 武日本歯科大学附属病院口腔介護・リハビリテーションセンター連絡先:〒102‐8158 東京都千代田区富士見2‐3‐16Dental Practice for Eating Support in Age of Mass Grave and Mass Remaining ToothTakeshi Kikutani1.はじめに─多歯時代がやってくる多死・多歯時代に求められる多死・多歯時代に求められる食べる機能を支援する歯科医療食べる機能を支援する歯科医療the Quintessence. Vol.31 No.2/2012̶0333

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