ザ・クインテッセンス2012年4月
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特別寄稿特別寄稿67はじめに 昨今は矯正治療がかなり一般的になった.マルチブラケット法を用いた本格治療をはじめとして,小児期の咬合管理や成人期以降のMTM・LOTなども含めると,治療のオプションが増加するとともに,材料や技術の向上によって治療方法は多様化を極めている.めざましく進化する矯正歯科界の一隅で,統合治療医とともに筆者が矯正治療に専門従事するようになって26年が経った.矯正を主訴に訪れる患者ばかりでなく,統合治療医に矯正治療を依頼されることもあり,専門開業での臨床とは少し様相が異なるかもしれない. 本稿では自験例を振り返り,どうすればもっと矯正治療を活用することができるのか,ホームデンティストと矯正のかかわりについて考えてみたい.1.ホームデンティストで活用する矯正治療とは 矯正治療は,包括的な治療のなかでどのような役割を果たすのだろうか.症例を供覧しながら矯正治療の有用性を再考する.1)統合治療から矯正治療に移行した症例(症例1:図1a~f) 症例1は叢生を主訴に受診した31歳の女性.問診からは,最近歯のでこぼこが強くなってきたこと,顎の痛みで食事に支障をきたしていること,重度身体障害がある子どもの世話でつねに身体的・精神的なストレスがあること,時間の制約で歯科に受診する機会がなかったことが明らかになった.口腔内をみると,全顎的な歯肉炎も生じていたが,自覚されていなかった.TMDの診査からは筋性の開口障害を生じていることがわかり,噛みしめ癖の関与が考えられた.矯正に関する診査・分析の結果から,叢生の直接的原因はアーチレングスディスクレパンシーであり,とくに下顎歯幅が上顎に対して過大であることがわかったが,最近になって叢生が悪化したと本人が訴えていることから間接的にはブラキシズムの影響も考えられた.筆者が感じた危機感は初診時の説明で本人にストレートに伝わり,治療の意髙橋喜見子埼玉県開業 向陽歯科医院連絡先:〒359‐1111 埼玉県所沢市緑町4‐36‐4The Possibility of Orthodontic Treatment in Daily Practiceキーワード:ホームデンティスト,矯正治療,意義,展望Kimiko Takahashiもっと活用したい矯正治療ホームデンティストと矯正のあり方the Quintessence. Vol.31 No.4/2012̶0773

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