ザ・クインテッセンス2012年4月
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これで納得! 総義歯臨床はじめに: 総義歯臨床における患者主観評価 1999年,カナダ・モントリオールにあるMcGill大学歯学部に研究員として派遣されたときに師事したProf. LundとProf. Feineの2人が行っていた臨床研究は,患者主観評価をアウトカムにしたim-plant overdentureと通法総義歯との比較研究であった.日本で主観評価をアウトカムにした研究などは聞いたこともなかったので,大きなインパクトを受けた.そのとき学んだのが,慢性疾患である無歯顎の評価は主観評価が最優先されることであった.Q1総義歯臨床は今後も重要になってくるのか?AWHOによると地球上の無歯顎率は21世紀に入った時点で6~78%と幅広く1,わが国では平成17年度歯科疾患実態調査において21%とされている.一方,先進国を中心にDMFTは確実に減少2しているものの,高齢者人口そのものは増加しているため,無歯顎患者率の減少はないと考えられている.つまり,総義歯臨床は,インプラントオーバーデンチャーなどの新たな手法も含め,健康長寿に及ぼす影響は大きいと思われる.Q2総義歯臨床で見失いがちな満足度評価とはどういうことなのか?A歯科医師側からみて「完璧な義歯なのに」と思っても患者の満足が得られないことに,落胆した経験はないだろうか? 歯科,とくに補綴にかかわる介入は,どうしても「他の先生とは違うやり方でよい印象を得た」,「自分の技術で義歯の吸着を得た」などの技術の比較に着目しがちである.この状態を良くも悪くも“technically driven”と表現する.いわゆる技術に重きを置くあまり「患者の評価」=「主観評価」の重要性を見失いがちになるのである.1.今後の総義歯臨床における患者主観評価の重要性 McGill大学の研究グループではQuality of Life(QOL)の測定に関する検討も精力的に行われてい日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座連絡先:〒271‐8587 千葉県松戸市栄町西2‐870‐1河相安彦The Effectiveness of Questionnaire to Measure Edentulous Patients' SatisfactionYasuhiko Kawaiキーワード:総義歯臨床,満足度,質問調査,主観評価患者の満足度をはかるための患者質問票の有効性とその指標81the Quintessence. Vol.31 No.4/2012̶0787

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