ザ・クインテッセンス5月
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43■平成24年春,がんと歯科の領域で2つの重大な動きが! 筆者は,この4月の新年度を特別な気持ちで迎えた.それは大学に合格して大きな夢と希望を抱いている新入生に似ている.胸躍る気持ち,まさにエキサイティング!(興奮)と表現してよいだろう. その理由は,筆者が専門とするがんと歯科の領域で,重大な動きが2つあったからだ.1つは,平成24年度改定予定のがん対策推進基本計画に歯科の役割が明確に定義されたこと.もう1つは,平成24年度保険点数改定でがん患者の周術期の口腔管理の点数が貼り付けられたことである.筆者自身,この2つの動きがあまりに急だったので,ある意味信じがたい内容だった.一方で開業されている先生方には,この一連の動きの情報がないため,まったく何のことかわからず,自分たちの診療にまったく関係のないことと間違った理解をされているのではないかと危惧している. この重大な2つの動きは歯科界の未来像を変えるパラダイムシフトになる可能性がある.読後,筆者が今まさに感じているエキサイティングな気持ちを共有してもらえればうれしい限りである.■がん対策推進基本計画における歯科の役割 2005年4月に二夜連続放送された「NHKスペシャル 日本のがん医療を問う」(http://www.nhk.or.jp/special/onair/050430.html)という番組を覚えている方はいるだろうか? がん患者が,国立がんセンター総長や厚生労働省の幹部に,がん医療の地域格差やドラッグラグ等の問題を生番組中に渾身の力で訴えた.詳細はホームページを参照してほしい.とにかくこの番組の影響は大きく,国をも動かした.その1年後の2006年6月にはがん対策について定めた日本の法律として「がん対策基本計画」が成立した.そして,この法律に基づき策定されたのが2007年がん対策推進計画である.これはがん対策の総合的かつ計画的な推進を図るため,基本法に沿ってがん対策の具体的な方向について定めたものである.各都道府県は,この基本法の内容に合わせ独自に各県ごとのがん対策推進計画をまとめ,事業を開始しなくてはならない.よって,このがん対策基本計画は,国の法律に基づくものであり,法的な強制力がある.なお,これは5年ごとにがん対策の到達度を評価しながら見直しすることが定められている.ちょうど本年度は策定より5年経過し,見直しを行う年にあたる.2012年6月に新計画の策定予定で準備が進められている. 2007年の最初のがん対策推進基本計画は厚生労働省のホームページで見ることができる(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/06/dl/s0615-1a.pdf).これを読むと残念ながら「歯科」または「歯科医師」,「口腔」「口」などの歯科に関する単語は1つも探し出せず,がん治療において歯科のかかわりや役割は一切明記されていない.残念ながらがん治療に歯科の役割は認知されていなかったのだ.しかし,同省ホームページに2012年3月1日付けで公開されているがん対策基本計画(変更案)には,歯科ががん治療に果たすべき役割が3か所に明記されている(表1). この表1の下線部の3つの文言から,国は,私たち歯科に対して,以下のように期待していることがわかる.『がん治療に歯科治療を含む口腔管理や口腔ケアを行うことが,がん患者の生活の質を向上させる.よって歯科はがん治平成24年春,歯科はがん医療の新しいステージに立つ!「がん対策推進基本計画に歯科の役割が明確に定義」および「保険改定でがん患者の周術期の口腔管理に点数貼り付け」の意義大田洋二郎静岡県立静岡がんセンター歯科口腔外科/日歯・国がん歯科医療連携運営委員会メンバー連絡先:〒411‐8777 静岡県駿東郡長泉町下長窪1007キーワード:がん,がん対策推進基本計画,周術期口腔管理,歯科診療報酬平成年春歯科はがん医療新ジ立がんと歯科の領域で2つの重大な動きMay 2012特別編the Quintessence. Vol.31 No.5/2012̶0979

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