ザ・クインテッセンス5月
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APPROACH to ORAL MEDICINE64はじめに 近年,わが国の急速な超高齢社会の到来,科学・医療の進歩にともなって,慢性疾患を有する高齢者が増加し,歯科領域においても疾病構造や患者のニーズも多様化している.口腔病変には,従来の外科治療に対して,薬物治療や心身医学的療法など,主に非観血的療法を必要とする疾患が増加しており,このような口腔内科的疾患は,全身疾患とのかかわりがみられることが多くなってきている.口腔内科的疾患には,症状は近接しているが,病態・原因が違う場合があり,鑑別のための知識が必要とされる.たとえば,「舌がヒリヒリ」,「口のなかがしょっぱい」,「ドロドロしている」など,さまざまな口腔症状で悩む人が増えている.このような患者の多くは数々の医療機関を受診しても口腔内には客観的所見が乏しいため,適切な対応がなされずに行き場をなくしていた.歯科医学教育でも盲点となっていた領域である. 「口腔乾燥」,「舌痛」,「味覚異常」といった症状は,原因が複数あり,それぞれが互いに関連しあっているため,その鑑別は難しい.当科が口腔内科を正式に標榜して10年が経過した.当科では,口腔内科疾患の診療体系を構築したことによって患者は全道から集まるようになり,外来患者数はこの5年間で1.5倍に増加した. 本稿ではこのような北海道大学の取り組みについて紹介する.この3大症状を中心に,症候学・鑑別診断の重要性を示し,従来の「外科的アプローチ」に加え,「内科的アプローチ」を適材適所で行う必要性について考えてみたい.キーワード:口腔乾燥,舌痛,味覚異常,カンジダ症北川善政/山崎 裕「外科的アプローチ」と「内科的アプローチ」の歯科臨床北海道大学大学院歯学研究科口腔診断内科連絡先:〒060‐8586 北海道札幌市北区北13条西7丁目Standpoints from Oral Medicine in Education and Clinical Management in DentistryYoshimasa Kitagawa, Yutaka Yamazakithe Quintessence. Vol.31 No.5/2012̶1000

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