ザ・クインテッセンス8月
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47■インプラント周囲炎がペリオ・ミーティングのメインセッションになる現実 3年ごとに開催される欧州の歯周病学会であるEuro Perio7がオーストリアのViennaという由緒ある街で,6月6日~9日にかけて開催された.そして,その大会閉幕のメインセッションが「インプラント周囲炎」であった.昨年秋の米国歯周病学会(AAP)のオープニングセッションもそうであったし,先日,東京で開催された日本臨床歯周病学会30周年記念大会においても,特別講演にハーツメイフィールド教授(オーストラリア)による同様のセッションが設けられていた. これらはまさに今の時代を象徴しているといえる.なぜなら,インプラント治療が世界中で爆発的に普及をしてからほぼ10年あまり,長期治療結果もそれにつれて当然ながら増えており,予後におけるインプラント周囲炎に多くの患者が悩まされていると聞く.そしてその理由の1つとして,多くの治療で歯周病学的な配慮が欠けているためと考えられている. Euro Perio7で講演された知見をもとに,インプラント周囲炎についての現況を考えてみたい.■インプラント治療の歴史を振り返り,近年感じること…… インプラント治療は1980年代後半より歯周病専門医と口腔外科医が,当初,慎重に治療に取り入れ始めて以来,右肩上がりに発展を続けており,欠損補綴の最重要なオプションの1つとなって久しい.そして,インプラントロジストという新種の歯科医師を生むにいたって,さらに一般歯科医の多くが診療に取り入れるようになってきている.また,治療技術と並行してメーカー主導の製品開発のサイクルも早く,1990年代当時と同じ製品は補修用部品にしかみられないというのが現状である. ブローネマルクシステムがとりわけ歯周病専門医に支持されたのは2回法であり,フィクスチャーに沿った上皮の深行増殖が抑制された状況でオッセオインテグレーションが得られると予想された点が考えられる.ブローネマルクインプラントの創世記は無歯顎症例の下顎に対して,マシンドサーフェスのフィクスチャーを左右オトガイ孔間に5~6本配置し,スタンダードと呼ぶ清掃性の高いアバットメントを連結し,その上にカンチレバーのフルブリッジを装着するところからはじまっている.この治療は非常に長期にわたって維持できることが数字として知られるようになったが,類似点のあまりない現在の最新製品であってもその数値がそのまま信じられているというのは問題なのかもしれない. その後,インテグレーション率の向上および治療期間の短縮を求めるためにマシンドサーフェスはラフサーフェスへと移行し,審美性の名のもとにアバットメントは歯肉縁下に隠れるようになった.しかし,歯周病学をベースに考察すれば機械研磨表面はルートプレーニングされた歯根面であり,ラフサーフェスは歯肉縁下歯石のように感じられた.当時3iはマイクロギャップから3スレッドまでマシンドサーフェスで,そこより根尖側方向はラフサーフェスのハイブリッドデザインを開発したのは歯周病専門医ならではのアイデアだったといえる. さらに審美的にみえるインプラント周囲組織は,1990年以前より深く埋入されたフィクスチャーの上に複雑な形状のアバットメントを配し,周囲の天然歯に付着した線維に支えられた厚みのある歯肉が歯周組織の構造とはまったく異なる見せかけの「審美的な歯頸線」を現出している.厚みのある骨上の歯肉はアバットメントと接触する面積が広く,その結果インプラント周囲溝は深くなり,歯周病学的なリスクは高まる.ブラックトライアングルが閉鎖している歯肉歯間乳頭にはcolが存在し,そこは非角化で炎症の好発部位でもある. 2000年以前ではスクリュー固定が全盛であったが,21世紀になってから審美的インプラント周囲炎・周囲粘膜炎の現状より,今後のインプラント治療のあり方を問う!小延裕之東京都開業 KNB Dental Office(小延歯科)連絡先:〒103‐0022 東京都中央区日本橋室町4‐3‐14 日本橋北村ビル4Fキーワード:インプラント周囲炎・周囲粘膜炎,歯周病,インプラント治療Peri-implantitisがEuro Perio7を席巻August 2012緊急企画1681the Quintessence. Vol.31 No.8/2012̶

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