ザ・クインテッセンス8月
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111はじめに 歯周病への取り組みは,20世紀の中ごろから大きく変わりEBMの体系,システム化が進められてきた.歯槽膿漏症から,歯周疾患,歯周病と名称も変わり今日に至っている1.歯周病学は「細菌感染を示唆したグループ」,「病理組織学的に体系化したグループ」,「治療体系を開発したグループ」,「疫学,予防体系を調査したグループ」などが総合的な研究開発を行い,発展してきた2.これらの推移を簡単にまとめたのが図1である. 最近,口腔のケア,管理が全身の健康から見直され,バイオフィルム細菌の除去が予防の観点から大きく取り上げられてきた.「生きがいを支える国民歯科会議(2010年11月)」,「歯科口腔保健法(2011年8月)」などからも,健診から口腔ケアへと歯科治療のニーズが転換期を迎え,その対応が求められている.すなわち,個人中心の診療所から病院内の口腔ケア,訪問診療,在宅,介護施設診療などで,日常生活のなかでの医療,食生活に入り込んだ医療を高齢社会のなかで体系化とその施策が問われてきた.とくに,歯周治療は,メインテナンス,SPT(サポート治療)に尽きるといわれているが,その方法論も再考の余地と問題を多く残している.1.歯周病の推移 歯周病は「細菌感染」という概念が明確になり,歯周病原細菌の同定が遺伝子的手法(PCR法)で嫌気性歯周病からみたプロバイオティクスキーワード:歯周病,バイオフィルム細菌,プロバイオティクス,バクテリアセラピー鴨井久一*1/柏 典子*2Probiotics on the View Point of Periodontal Disease-Bacteria TherapyKyuichi Kamoi, Noriko Kashiwa*1日本歯科大学名誉教授(NPO日本歯周病学会指導医)連絡先:〒177‐0041 東京都練馬区石神井町8‐46‐10*2バイオガイアジャパン株式会社Bacteria Therapy研究員連絡先:〒731‐5125 広島県広島市佐伯区五日市駅前1‐3‐171950年代: 対症療法(症状改善)1960年代: プラーク歯周病原細菌1970年代: プラークコントロール(感染症の概念)1980年代: 局所因子,生体宿主,環境因子 (歯周内科の導入)1990年代: 歯周組織再生療法(GTR,エムドゲイン®)分子生物的病態の解明2000年代: 歯周病と全身とのかかわり(歯周医学) インプラント治療2010年代: 宿主免疫機能の活性化(歯周統合医療・総合医療)プロバイオティクスの概念図1 歯周治療の推移.the Quintessence. Vol.31 No.8/2012̶1745

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