ザ・クインテッセンス9月
1/8

臨床医が知っておきたい解剖のツボ33はじめに われわれは日常,意識することなく食品や飲料を飲み込んでいる.しかし,実際の咀嚼から嚥下に至るメカニズムは複雑で,さまざまな部位がスムーズな連携をとることで成り立っている.摂食・嚥下の舞台である咽頭は,前方の口腔,下方の喉頭と多くの筋が連続し,機能的に連動する体制が整っている(図1). 歯科医療の最終的な目的の1つに患者の摂食行動を回復させることがあり,そのためには摂食・嚥下のメカニズム,そしてその機能を担う筋組織について理解することが重要となる.摂食・嚥下を理解するための機能解剖学(最終回)阿部伸一/井出吉信東京歯科大学解剖学講座連絡先:〒261‐8502 千葉県千葉市美浜区真砂1‐2‐2キーワード:嚥下,摂食,誤嚥,咽頭,喉頭AabcdeBfagchji図1 頸部の解剖写真図1 A:斜め上方から観察,B:斜め下方から観察.頸椎を除去し咽頭を中心とした摂食・嚥下の舞台となる領域の解剖標本.少し角度を変えるだけで多くの構造物が観察可能となる.頬筋(a)と上咽頭収縮筋(b)は筋線維束が連続し(出生時は翼突下顎縫線で完全に分かれており,両筋は支配神経が異なる),咀嚼から嚥下の機能が連動可能な構造となっている.a頬筋b上咽頭収縮筋c茎突舌筋d顎二腹筋後腹e下咽頭収縮筋f乳様突起g舌骨舌筋h舌骨i甲状軟骨j甲状舌骨筋the Quintessence. Vol.31 No.9/2012̶1887

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です