ザ・クインテッセンス9月
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129子どもたちをう蝕・不正咬合から守る!連載通院してくれる子どもたちのためにも正確な診断を 子どもたちの口腔管理を行うには咬合誘導とう蝕予防がその両輪である.う蝕は歯科疾患のなかでもっとも代表的なものであり,親であればまずは自身の子どもをむし歯にさせたくないという思いで通院を始めるのであろう.昨今,う蝕予防の知識は一般的になり,それほど歯科医院側が必死になって親たちにう蝕予防の指導をしなくてもすむようになってきた.厚生労働省から発表された平成23年度の歯科疾患実態調査の結果で12歳児のDMFTは1.4であり,同じく平成23年度の学校歯科保健統計でも1.20となって子どもたちのう蝕予防の成果は十分に上がってきていると思われる. この数字で大切なのは,う蝕かどうかの診断がどのように行われたかである.世間一般の方の認識では,むし歯かどうかの診断が歯科医師間で統一されていないなどとは考えもしないであろう.しかし実際に臨床で子どもたちの歯を診ていると臼歯部の裂溝内にう蝕が進んでいるのかどうか,隣接面の脱灰が進んでいるのかどうかなど診断に迷うことが多い.以前,定期健診に通っていた子どもが痛みを訴えて急患来院したことがある(図1).第一大臼歯の裂溝内から始まった大きなう蝕を見逃していたためであり,何のために定期健診に通ってもらっていたのか,むし歯も見つけられない歯科医師としての自分が情けなく本当に落ち込んだことがあった.その一件を期に,二度と同じ過ちを繰り返さないようにう蝕診断に真剣に取り組むようになった.「定期健診に通っていた歯科医院でむし歯を見逃された」と主訴に来院する患者がいる.「その歯科医師を訴えたい」などという物騒な苦情も地域歯科医師会に寄せられるという.そこからは「歯医者なのにむし歯くらい見つけられないのか」という患者の気持ちが伝わってくる. 定期健診の重要性を医院で唱えるのであれば,通ってくる子どもたちのためにも裂溝や隣接面の初期う蝕の診断は正確に行えるようになりたい.須貝昭弘キーワード:初期う蝕,裂溝う蝕,隣接面う蝕,試験削合,Dファインダー5初期う蝕の診断神奈川県開業 須貝歯科医院連絡先:〒212‐0016 神奈川県川崎市幸区南幸町2‐8‐1 オーベル川崎101号the Quintessence. Vol.31 No.9/2012̶2013

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