ザ・クインテッセンス11月
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103子どもたちをう蝕・不正咬合から守る!(最終回)連載歯髄保護を念頭に置いた保存的で確実な治療を! 自分の行った修復処置や補綴処置の長期経過をみていると天然歯は本当に良くできた組織であり,軽々しく切削するべきものではないと感じる.切削は最小限にし,一度脱灰した歯質でも再石灰化が可能であればそれをめざすのは当然であり,う蝕もなるべく初期の段階で発見し修復するのが最善の方法である.近年の接着性コンポジットレジンとフロアブルレジンの進歩で不必要な切削が避けられるようになった.しかし象牙質までう蝕が進行してから修復処置を行った症例で,後に歯髄症状がでてしまったということは誰もが経験することだろう.接着システムの向上で辺縁漏洩は起こらないはずであるが,臨床ではそれが原因と思われる歯髄症状がでてしまう.手技の不手際も一因かもしれないが,各メーカーから提供されている接着システムを全面的に信用する気にもなれない. 象牙質う蝕に対して確実に歯髄を保存するにはどうすれば良いだろうか.とくに子どもたちの幼弱な永久歯の歯髄を失うことは絶対に避けなければならない.萌出してきたばかりの子どもたちの象牙質は脆弱であり,どこまでう蝕が進行し,どこまで除去すれば良いのかがわかりにくい.その反面,歯髄の活性は高く,再生能力も象牙質形成能力も高い.子どもたちの象牙質う蝕に対してはその特性を生かした対応が理想である.う蝕に感染した象牙質を除去しすぎずに,残した象牙質をできるだけ抵抗性の高い状態に改善してから修復処置を行えば,歯髄を保存できる可能性は高くなる. 「歯はどこまで残せるか」にこだわって臨床を行っているが,どうしても抜歯をしなければならないのは歯根破折によることが多い.力の問題も大きいが歯根破折を起こす歯は歯髄を失った失活歯である.10代で歯髄を失ってしまうようなことになれば,80代までその歯が保存できるかどうか危うくなる.う蝕にならないように予防していくことが重要であるが,う蝕処置を行う場合には歯髄保護を念頭に置いた保存的で確実な治療を行いたい.須貝昭弘キーワード:象牙質う蝕,段階的削除法,歯髄保護6象牙質う蝕への対応神奈川県開業 須貝歯科医院連絡先:〒212‐0016 神奈川県川崎市幸区南幸町2‐8‐1 オーベル川崎101号the Quintessence. Vol.31 No.11/2012̶2455

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