ザ・クインテッセンス11月
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吹譯景子 Keiko Fukiwake九州大学大学院歯学研究院口腔病理学教室・特別研究員連絡先:〒812‐8582 福岡県福岡市東区馬出3‐1‐1吹譯九州大連絡先イラストで学ぶ第6回(最終回) 鑑別診断~歯胚の発生過程をたどる~エンドのバイオロジーエンドのバイオロジーキーワード: 歯原性,外胚葉性間葉,神経堤細胞162イメージできる鑑別診断を! 今回のテーマは,鑑別診断です.これまで根尖部歯周組織における「炎症」のメカニズムを解説してきましたが,細かく見えるようになると,逆に見落としてしまいがちなことがあります.それは,根尖部には「炎症」ではない病態,「形成異常」や「腫瘍」なども存在する可能性があるのだということです.なかには早期発見が不可欠なものや,外科的な刺激を与えてはいけないものもあります.しかし鑑別診断というと,エックス線写真,病理組織像,ややこしい病名のWHO分類など,とても大切なことですが,無理に覚えようとして教科書とにらめっこしても,残念ながら時が経つと忘れてしまうものです. 一般開業医にとって日々の臨床で必要なのは,細かい病名の鑑別ではなく,「エンド由来の病変であるか否か」,つまり「炎症性のものであるか否か」「根管治療をしてよいものかどうか」ということではないかと思います.そこで今回は,いつも出てくるエックス線像や病理組織像の方向から攻めるのではなく,炎症以外の疾患が「なぜそのような病態を呈するのか」という成り立ちの根本を理解し,“覚えなくても忘れない,イメージすれば思い出す”鑑別診断をめざしてみたいと思います.歯の発生過程を振り返る 図1に顎骨内に生じる主な病変を示しました.嚢胞・腫瘍については,根尖部付近にエックス線透過像として現れる可能性のある主なものを挙げていますが,細かい病名や由来を今この段階で見てしまうと「うわっ」となりますので,それはちょっと置いておいて,まずは分類だけ見ていきましょう. 基本的に嚢胞や腫瘍は,歯原性のものか,そうでないものかに分類されます.「歯原性」というのは,「歯をつくる組織につく接頭語」です.つまり,歯の発生過程で現れる組織はすべて歯原性ということになり,この過程でミスが起こった場合,歯原性の嚢胞や腫瘍になり,歯の形成異常となるわけです. それでは,これらの病態を理解するうえで欠かせない「歯の発生過程」を振り返りましょう.第4回(7月号)で少し触れましたが,多くの組織器官は「上皮と間葉の相互作用」によって形づくられます(図2a).それは上皮と間葉とが幾重にも交錯する情報交換により,お互いの成長を促し合いながら1つのものをつくり上げていく過程です(図2b).歯も「上皮と間葉の相互作用」によって成っており,その発生は「口腔上皮」が「神経堤由来間葉」(後述)の働きかけにより肥厚して,歯堤と呼ばれるふくらみをつくるとこthe Quintessence. Vol.31 No.11/2012̶2514

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