ザ・クインテッセンス2月
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“加齢と味覚”の真実日常臨床に役立つQ&A第2回 義歯と味覚についてNaoki Kodama,Shogo Minagi,Ryuji Matsuo* 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科咬合・有床義歯補綴学分野*岡山大学大学院医歯薬学総合研究科口腔生理学分野 連絡先:〒700‐8525 岡山県岡山市北区鹿田町2‐5‐1兒玉直紀/皆木省吾/松尾龍二*キーワード: 義歯,味覚,カンジダ症,片側性咬合平衡,金属床義歯ONE POINT義歯床の設定位置に味蕾は存在しないが,義歯装着により味覚に何らかの影響を与える可能性が高い・義歯装着と味覚の関連について・実際の研究からみた「義歯と味覚」・味覚障害を生じる場合の原因と対処法今回の 講義内容口腔内には味覚受容器として味蕾が数多く存在する.味蕾は大多数(約2/3)が舌表面に,その他(約1/3)には軟口蓋,咽頭部に存在する.通常,義歯床は欠損部顎堤に(上顎であれば硬口蓋を含んで)設定するが,味蕾が存在する場所には設定していない(図1).つまり,義歯床は味覚受容器である味蕾を被覆しておらず,味覚そのものには影響を与えないはずである. しかし,Murphyらの報告によると,床義歯を装着することで味覚が鈍くなると報告している1.またHenkinらは,上顎義歯を装着することで,①甘味,塩味の味覚閾値には影響を与えないが,酸味,苦味の味覚閾値が上義歯は味覚にとって不利となりうるか?1昇する(味覚感受性が低下する),②におい(flavor)を識別しにくくなる2,と述べている.さらに,Kapurらは義歯を装着することで酸味の判断閾が低下する(酸味に対して鋭敏になる)と報告しており3,見解が一致していない.実際には義歯装着により味覚感受性が低下すると考えるものが多いようである.味蕾の局在部位義歯床の外形線図1 味蕾の局在上下顎ともに義歯床の設定範囲に味蕾は存在していない 補綴治療にともなう味覚障害として,義歯に関することがもっとも多い.そこで,今回義歯と味覚との関連について研究報告も交えて解説する.日常臨床に役立つ義歯の診査項目,治療のワンポイントについても述べたい.66the Quintessence. Vol.32 No.2/2013—0288

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