ザ・クインテッセンス3月
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107特集3その歯の移動は安全か?─歯周矯正の立場から─Q&A形式で学ぶ考慮すべき₄つのポイントPitfalls of a Tooth Movement in Adult OrthodonticsAkihiko Kaji, Satoshi Sekinoキーワード:成人矯正,歯周矯正,炎症のコントロール東京都開業 日本ビル加治矯正歯科医院連絡先:〒100‐0004 東京都千代田区大手町2‐6‐2 日本ビル4F*日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座連絡先:〒102‐8159 東京都千代田区富士見1‐9‐20加治彰彦/関野 愉* 近年,人口動態の変化によって,全人口のなかで中高年の占める割合が増大してきた.このような変化にともない,矯正治療を始める成人(中高年含む)も増加してきた.現在,国民の多くが歯周病に罹患しており,年齢が進むにつれて罹患率が高くなることは周知の事実であり,成人矯正では程度の差はあれ,歯周病の問題を抱えている患者に遭遇する機会が多くなっている. 成人の口腔内は10代の若年者と比べ,歯周病のみならず,う蝕などが原因ですでに多くの治療が行われており,より複雑な問題を抱えていることが多い(図1). このような患者の矯正治療に際して,果たして問題となっている歯を移動させてよいのかという疑問を感じることが多いのではないだろうか. 本稿では,とくに歯周組織に問題を有する歯および歯列の矯正治療に対し,どのようにアプローチすべきかを,歯周矯正の立場から既存の研究論文をもとに検討してみたい.また,そのような矯正治療を行った後の保定の方法,ならびに保定装置と歯周組織との関係についても考えてみたい.成人の口腔内の特徴(10代と比べて) すでに歯周組織にダメージがある可能性がある(アクティブかもしれない) 病的な歯の移動によって,咬合や審美性を損なっていることがある 多数の修復・補綴物 欠損歯の存在図1 成人の口腔内の特徴.はじめにthe Quintessence. Vol.32 No.3/2013—0567

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