ザ・クインテッセンス3月
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79 歯周病は,歯周ポケット内細菌のうち特定の細菌が引き起こす歯牙支持組織への感染症であり,咬合性外傷が加わるとその進行は助長される.治療法は炎症と力のコントロールといわれるように,まず原因であるバイオフィルムや歯石,細菌性プラークを歯周ポケット内から除去し,その後プラーク等の再付着を予防することである.治療の成功にはプラークコントロールしやすく,また咬合性外傷を誘発しないような快適な口腔内環境の構築が大切である. 歯周病治療においては,炎症のコントロールとしての歯周基本治療がもっとも重要なのである.しかし,実際の臨床ではプラークコントロールが行いやすい浅い歯周ポケットばかりでなく,時に深い歯周ポケットも存在する.スケーリング・ルートプレーニング(SRP)による歯肉縁下の根面デブライドメントは解剖学的にコントロールが難しい部位や歯周ポケットが深い部位では繊細な器具操作が必要で,確実な根面清掃は難しい.そのため熟練した高度な技術と長い治療時間が必要だと日々の臨床で実感している.そのような場合,歯周外科で明視下のもと汚染物質を取り除けば治療の効率も良く,メインテナンスも行いやすく,場合によっては審美的要求を満たせるというアドバンテージもある. 力のコントロールとしては,咬合性外傷の原因である早期接触,ブラキシズム,舌・唇の悪習癖の診査はもちろん,1歯単位の診断も含めた総合的な1口腔単位の診査・診断が重要である.臼歯部と前歯部に適切な力の分散,外傷性咬合を避ける配慮,可能であればアンテリアガイダンスとポステリアサポートの調和を図ることが必要だと考えている. また,歯周病は患者の環境,生活習慣に左右され,治療のゴールも患者の価値観によって大きく異なってくる.そのため筆者は患者の希望,条件,制約等を考慮して,お互いが協議,納得,同意したのちに歯周病治療を行ってきた.このような考えに基づいて治療した2症例の治療内容・経過を提示して,外科処置,非外科処置の選択について私見を述べてみたい.外科・非外科の共存があたりまえの時代シリーズ:その根拠はなんだ?歯周治療長期経過症例からその治療の根拠を学ぶ福岡県開業 安東歯科医院連絡先:〒816‐0932 福岡県大野城市瓦田1‐16‐12安東俊夫The Trend when Coexistence of Surgery and No-Surgery is the Common ViewThe Medical Treatment Basis is Learned from the Periodontal Treatment Long-Term Progress CasesToshio Andoキーワード:外科非外科共存,メインテナンス,判断根拠はじめに:歯周治療─私の考え1the Quintessence. Vol.32 No.3/2013—0539

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