ザ・クインテッセンス3月
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160実践編Part2:露髄させない治療法――ステップワイズエキスカベーション歯髄における治癒&治療のゴールを探る(最終回)Considerations for the Goal of Healing and Treatment in Dentin PulpPart 2:Stepwise ExcavationHideyuki Izumiキーワード:ステップワイズエキスカベーション,直接覆髄滋賀県開業 西本歯科医院連絡先:〒526‐0037 滋賀県長浜市高田町14‐29泉 英之はじめに 直接覆髄の予後は,的確な診断と確実な手技があれば決して悪くはない(1月号,2月号を参照).とはいえ,やはり多くの歯科医師は露髄を避けたいと思うであろう.そこで直接覆髄の議論の対象として出るのが,ステップワイズエキスカベーションである.この術式を行えば,「直接覆髄よりも多くの歯髄を救えるのではないか」という考えである. 今回は,ステップワイズエキスカベーションにおける「治癒のゴールと治療のゴール」について,症例を交えて考察したい.1.ステップワイズエキスカベーションとは? ステップワイズエキスカベーションを直訳すると“段階的なう蝕の除去”である.歯髄に近接した大きなう窩に対して,すべてのう蝕を取り除くのではなく,歯髄に近いう蝕を一部残し,薬剤を貼薬することにより,残存させたう蝕を硬化させる.その後,リエントリーを行い,硬化しなかったう蝕を完全に除去し,最終修復を行う方法である1(図1).この方法には他の呼称もあるが,ここでは「ステップワイズエキスカベーション」とする(表1).2.ステップワイズエキスカベーションにおける治癒のゴール①:象牙質編1)残存させたう蝕は硬化する? 「ステップワイズエキスカベーションがうまくいかなかった」「リエントリーしたが,う蝕が硬化していなかった」という話を聞くことがある.これはメカニズムを理解していないゆえの誤解か,本当にう蝕象牙質が硬化していないか,の2つが考えられる. 1つ目の「メカニズムの理解不足」から述べたい.う蝕は硬化しない層と,硬化する層があり,いわゆるう蝕第1層と第2層がこれにあたる(図2).第1the Quintessence. Vol.32 No.3/2013—0620

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