ザ・クインテッセンス4月
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「食べる」「話す」をサポートするリハビリテーション歯科医学鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座連絡先:〒230‐8501 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2‐1‐3Dental Medical Rehabilitation for Eat and Speak FunctionsTakeo Suga菅 武雄 本特集は,これからの超高齢社会に求められるであろう「リハビリテーション医学(以降,リハと略す)」を歯科に導入したらどんな世界が広がるか,という課題に挑戦するものである.その領域を「リハビリテーション歯科医学」と呼ぶ(以降,リハ歯学と略す1). リハが生活医学として,超高齢社会になくてはならない分野であることは,あえて解説の必要がない確定事項であろう.しかし,歯科が十分にリハを導入し,新しい時代に対応しているかというと,それはまだまだ現実的には寂しい状況である.実はリハは本質的に歯科に相性が良い分野といえる.歯科医療そのものがリハである,という言いかたさえできるほどである.自然治癒能力が低い器官(歯と歯周組織)の疾患,外科的治療法の後遺障害としての歯の欠損,そして装具としての義歯.この仕組みはリハの考え方に合致している.歯科医療がリハを導入すれば,対応できる障害や症状を拡げることができ,生活機能向上の可能性が広がるのではないか,と考える理由である. 今回は「食べる」と「話す」の2つの機能を取り上げ,そこに歯科が他職種から期待されている「装具」の視点から紹介する.蛇足ではあるが,本稿では義歯も装具の1つとして扱うこととする. 「食べる」機能と「話す」機能には似た部分と異なる部分がある.関連する筋群は近似しているが,その制御系は異なる.たとえば,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者において,嚥下時には鼻咽腔閉鎖機能が維持されていても,発語時の閉鎖が悪くなりコミュニケーションが困難になる場合がある.また,嚥下困難から症状発現し,病状進行にともない発語機能が低下する場合もある.つまり,機能評価の結果によって対応が異なるのである.リハ歯学では動的に変化する機能を評価し,対応することが求められる.確かに日常の外来診療で摂食・嚥下機能と発特集2はじめに76the Quintessence. Vol.32 No.4/2013—0770

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