ザ・クインテッセンス4月
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はじめに 病的な咬合状態の患者が来院し,治療を必要とする際,その状態を原因も含め,的確に診断することなく,目に見える病態だけに固執して治療計画を立てて治療すべきではない.なぜなら,それだけでは治療結果の永続性を得ることができず,治療前と同じ原因で治療結果が崩壊するという経緯をたどることが予想されるからである.治療結果の永続性を長く維持するためには,炎症と力に起因する問題点を正確に診断し,それによって適切な治療を提供することが歯科医師の使命であると考える. そこで本稿では,的確な総合診断とinterdisci-plinary approachによって治療した症例を通じて,治療結果の永続性を得るための要素のなかで,とくに力のコントロールに関する咬合治療について考えてみたい(図1).治療経過 患者は56歳,女性で,主訴は上顎左側補綴物の違和感.他院にて多くの歯科治療を受けたにもかかわらず,再び治療が必要な状態で2004年10月に来院した.診断の結果,上下歯列弓の大きさと形態のディスクレパンシーによる咬合不安定が原因と考えられ,これを改善するための矯正治療をともなったinterdisciplinary approachによって治療を行った.治療の流れは,SJCD・SKCDの「System of Clinical Dentistry」をベースとしている(図2). 初診時の口腔内写真から,上顎歯列弓は狭く,逆に下顎歯列弓は広く上顎と下顎の形態が調和せず,重度なディスクレパンシーがみられた(図3).また,同エックス線写真からは,歯の位置が適正ではなく,両側の下顎頭に退行性変化がみてとれる(図4). 主訴が上顎左側の補綴物の違和感であったため,まず補綴物を除去し,の歯内療法を行うとともに,は抜歯とした. 長期的に維持安定を得るための2つの要素である力のコントロールと炎症のコントロールに関する知識を基にしたこの症例のプロブレムリストを図5に示す.炎症の面では,わずかな歯肉炎や不適切な根管治療,そして補綴物の不適合という問題がみられた.一方,力の面では多数歯欠損に対応したロング海外の新進気鋭の臨床家からの臨床レポートに,日本のメンターからコメントをいただく欄.包括的歯科治療における咬合治療(力のコントロール)の重要性キーワード: interdisciplinary,longevity(長期的維持安定),力のコントロール1993年 韓国の朝鮮大学校歯科大学卒業1998年 ソウルでdentopia Dental Clinicを開業2003年 SKCD(Society of Korean Clinical Dentistry)の創立メンバーとして活動.現在は補綴治療を中心に診療を行う.崔 大勳第1回The Importance of Occlusal Force Control in Interdisciplinary Practicedentopia Dental Clinic連絡先:2F. Hansin BLD., #65-32, Jamwon-dong, Seocho-gu, Seoul, KoreaChoi Dea HoonFRMKOREAシリーズ海外臨床レポート168the Quintessence. Vol.32 No.4/2013—0862

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