ザ・クインテッセンス5月
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はじめに 柏市は,千葉県の北西部に位置する人口404,252人(2012年現在)を抱える中核都市であり,柏歯科医師会は現在180名の会員から構成される社団法人である.1993年から柏歯科医師会は「お口の中にもがんはできる」ことを市民に広く啓発するために,また口腔がんは病変が進行しないと自覚症状が現れにくく専門家による早期発見が必要であるため,柏市からの委託事業として口腔がん検診を始めた. 一般的に,がんの予防は第1次予防と第2次予防に分けられ,がん検診は第2次予防のもっとも重要な手段といわれている.口腔・咽頭がんはuncon-trollable,すなわち“対策がないがん”として警鐘を鳴らされているが1,非常に早くから着眼し,地元に密着して口腔がんの早期発見に取り組み始めたのが柏歯科医師会である. 柏歯科医師会口腔がん検診は,柏市独自の取り組みとして一般財源化されて,本来は「任意型」である検診を「対策型検診」として導入して20年が経過した.柏歯科医師会口腔がん検診の特色は,地域のかかりつけ歯科医を受付窓口にした特定の検診施設による「集団方式」と,大学病院で細胞診検査を行う「個別方式」の複合型を発案した点である.柏歯科医師会口腔がん検診の事業内容,その成果と問題点などを併せて報告する.検診概要 口腔がん検診は,柏市民への啓発事業である柏市口腔衛生大会の一環として,口腔がんによる死亡率を減少させる目的で1993年度から柏歯科医師会により始められた.1993~1998年度までの6年間は年1回6月,2001および2002年度は6,11,2月の3回,そして1999,2000年度および2003~2011年度は6,11月の2回であった. 本稿で使用した口腔がん検診の概略に関するデー口腔がん検診20年の軌跡〜柏歯科医師会の取り組み〜Oral Cancer Screening Follow the Tracks of 20 Years~Effort of Kashiwa Dental Association~久山佳代*1,2/松本 敬*2/近藤壽郎*3/秋元芳明*4/山本浩嗣*1,2*1日本大学松戸歯学部口腔病理学講座*2日本大学松戸歯学部付属病院病理診断科*3日本大学松戸歯学部顎顔面外科学講座*4日本大学松戸歯学部口腔外科学講座*1連絡先:〒271‐8587 千葉県松戸市栄町西2‐870‐1Kayo Kuyama, Takashi Matsumoto, Toshirou Kondoh, Yoshiaki Akimoto, Hirotsugu Yamamotoキーワード:口腔がん検診,口腔擦過細胞診FOCUS107the Quintessence. Vol.32 No.5/2013—1031

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