ザ・クインテッセンス5月
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“歯科医のための”内科疾患ファイル 不整脈には非常に多くの種類があり,多くの場合は治療の必要もないが,ときとして心室細動のような非常に危険な不整脈へ進展し死に至ることもあるため,その診断と評価は循環器領域において重要な位置を占めることは言うまでもない. とくに重要なことは,不整脈は心不全と同様,あらゆる心臓疾患において高頻度に認められる現象であると同時に,見かけ上心臓には疾患がない健康人においてもしばしば認められるという点である.24時間ホルター型心電計を用いて不整脈の検出を行ってみると,不整脈がまったく出現していないことはほとんどない.それほど歯科診療においても日常的に遭遇するもので,最低限の知識は備えておきたいものである.刺激伝導系と心電図 心臓は構成する心筋の中を電気活動が伝導すること(刺激伝導)により収縮と拡張を繰り返している.刺激伝導は右心房内の洞結節から始まり,心房内を走行する刺激伝導系から心房全体に拡がり,いったん房室結節へ集束される.次いで房室結節から心室内を走行する刺激伝導系(ヒス束,プルキンエ線維)を伝わり心室全体に伝播する(図1).1回の伝導で1拍の拍動が形成される.その過程で刺激伝導系に何らかの異常が生じた場合に不整脈が発生する. すべての不整脈は心電図により診断が可能である.心電図には12誘導心電図とモニター心電図があるが,歯科診療などにおいてはモニター心電計を用いておおよその不整脈の診断が可能である.基本心電図波形はP波,QRS波,T波から成り(図2),P波は心房の電気的興奮,QRS波は心室の電気的興奮,T波は心室の電気的興奮の終了を表すものである.今回は図3のような心電図イメージを用いて解説する.基線の上に立つ縦棒をQRS波とする.ここでは各QRS間は距離が等しいことを示している.不整脈発生の機序 刺激伝導系の異常は多くの場合その組織の変性,あるいは機能的障害により発生する.組織の変性は虚血を原因とすることや特発性のことが多い.したがって,虚血性心疾患や心筋の変性をきたす特発性心筋症などでは不整脈の合併が非常に多い.また刺激伝導系は自律神経支配を受けており,何らかの自律神経失調,つまり交感‐副交感の不均衡が生じると機能的障害が発生し不整脈を生じることがある.File5不整脈大木貴博( 東京歯科大学市川総合病院循環器内科)佐藤一道( 東京歯科大学口腔がんセンター)【監修】西田次郎(東京歯科大学内科学講座)片倉 朗( 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座)連絡先:〒272‐8513 千葉県市川市菅野5‐11‐13図1 刺激伝導系図2 基本心電図波形図3 心電図イメージ房室結節プルキンエ線維洞結節ヒス束P波QRS波T波130the Quintessence. Vol.32 No.5/2013—1054

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