ザ・クインテッセンス8月
2/8

特集2大森有樹大阪府開業 大森歯科医院 連絡先:〒541‐0053 大阪府大阪市中央区本町3‐1‐2 大原ビル2Fキーワード:力のリスク診断,治療計画,咬合再構成The Treatment Planning Changed by Occlusal Diagnosis~類似症例の比較により学ぶその実際~力のリスク診断によって変わる治療計画Yuki Omoriはじめに われわれが日常臨床で遭遇するトラブルのなかには,力が関与した,もしくは力が後押しているものが多数みられる(図1).しかし術者も患者も,できればそれらのトラブルを回避し,修復・補綴物が長期的に安定してほしいと願っている. 口腔内に起こるトラブルの原因は意外とシンプルである.①う蝕,②歯周病,③力(咬合),④医原性の4つくらいしかない(図2).これらの要因が複雑に絡み合って病態を形成しているため,治療・メインテナンスにあたっては個々の患者のリスク診断(どのような病気になりやすいのかの診断)を行う必要がある.力のリスク診断が治療計画を左右する う蝕と歯周病,つまり細菌感染により生じた炎症に関してはエビデンスも多く存在し,カリオロジーやペリオドントロジーに基づき個々のリスク診断をし,しかるべき処置を施すことで大きなトラブルに見舞われないようにすることが可能である.しかし,力に関してはエビデンスも少なく,それぞれの術者の勘や経験に頼るところが多い. もし,ある患者が力によって起こるトラブルに見舞われやすい(力のリスクが高い)のであれば,咬合再構成をはじめとする力のコントロールが必要となる(図3).そうしなければ,表面的な問題のみを解決する対症療法になってしまい,治療後も同じ力のトラブルが続出する可能性が高くなるからである.その判別は,力のリスク診断を行わなければわからない.つまり力のリスク診断の結果によって,咬合再構成が必要かどうかを含め,治療計画が大きく変わるのである. 根本的な解決を図るためには,力のリスク診断を行い,その結果に基づき治療計画を立て,治療・メインテナンスにあたらなければならない.特集266the Quintessence. Vol.32 No.8/2013—1672

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です