ザ・クインテッセンス8月
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連 載123なぜ今咀嚼能力なのか?大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座歯科補綴学第二教室准教授*1大阪大学大学院歯学研究科招聘教員 *2大阪大学名誉教授連絡先:〒565‐0871 大阪府吹田市山田丘1‐8Takahiro Ono/Yasui Sakae/Takashi Nokubiキーワード:咀嚼能力評価法,咀嚼能力測定用グミゼリー,咀嚼能率小野高裕/安井 栄*1/野首孝祠*2超高齢社会で注目される咀嚼能力評価の意義と可能性連載のはじめに 超高齢社会において「咀嚼」の重要性がますます高まっていることは,「咀嚼」を専門に掲げる諸学会に対するマスコミからの問い合わせや,「咀嚼」をテーマにした市民フォーラム(図1)で参加者から寄せられる質問内容からも窺うことができる. 「咀嚼をよくすれば賢い子に育つのか?」「咀嚼のダイエット効果は?」「咀嚼によって認知症を防ぐことはできるのか?」等々……あらゆる世代からの関心が咀嚼に集まっている.それは,とりもなおさず,健康な歯と噛み合わせの育成に始まり,それらを損なう疾患の予防と治療,そして損なわれた場合の人工的な修復材料による回復,すなわち,生涯にわたる咀嚼機能の維持・向上を使命とする歯科医療への強い期待の表れと解釈することもできる. 咀嚼は幼児期に獲得され,健全な顎口腔機能系の発育によって能力として完成されるが,その後う蝕,歯周病の罹患や歯の喪失により低下する. またそこに発達障害や後天的疾患が加わることによっても影響を受ける.ヒトの一生の各ステージにおいて,咀嚼が心身の健康に及ぼす影響が決して小さくないことは,歯科のみならず,医科,教育,栄養,介護・福祉の各分野から指摘されているとおりである. では,われわれ歯科医師は,咀嚼をどのように測り,記録し,それを臨床に活かしてきただろうか? これまで多くの歯科界の先人達がこの問いかけを行い,実際にさまざまな咀嚼に関する評価法が試みられてきたが,最近その成果の一部が先進医療に取り入れられ,ようやく本格的な実用化への道筋が示された. そこで,今まさに「咀嚼能力評価法」を日常臨床に活用し,得られた情報を広く社会に開示すべき時期が到来しているという視点に立ち,今月号より3回にわたって筆者らが開発してきたグミゼリーを用いた咀嚼能力評価法とその展開について紹介したい.そのなかで,咀嚼能力評価法と歯科臨床のみならず,健康長寿を志向するさまざまな分野とのコラボレーションについて展望を共有できれば幸いである.54the Quintessence. Vol.32 No.8/2013—1660

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