ザ・クインテッセンス10月
7/8

連 載123生涯にわたるヘルスプロモーションとケアに向けて大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座歯科補綴学第二教室准教授*1大阪大学大学院歯学研究科招聘教員 *2大阪大学名誉教授連絡先:〒565‐0871 大阪府吹田市山田丘1‐8Takahiro Ono/Yasui Sakae/Takashi Nokubiキーワード:超高齢社会,ヘルスプロモーション,ケア,咀嚼能力測定法小野高裕/安井 栄*1/野首孝祠*2(最終回)超高齢社会で注目される咀嚼能力評価の意義と可能性今回のねらい 本連載では,1回目に咀嚼能力の測定法,2回目にその歯科臨床における意義について紹介してきた.今回は,連載のもうひとつのメインテーマでもある,咀嚼能力を測ることから始まる超高齢社会におけるヘルスプロモーションとケアに向けての意義と可能性について考えてみたい. 「超高齢社会」では,長い一生をどのように健やかで生きがいあるものにするかが常に人々の関心の対象となる.そして,「咀嚼」が,ヒトの一生を貫く「健康・長寿」のタテ糸のひとつであることは言うまでもない.すなわち,咀嚼の重要性は高齢期になるまでに熟知すべき課題である. すでに子どもの食行動の変化とそれにともなう「噛めない子ども」の問題が指摘されて久しい.また,成人における食行動が生活習慣病の原因となることは周知の事実である.そして,咀嚼能力の低下に応じて高齢者に安全な食事を提供することも,介護における重要な課題となっている.現在すでに始まっている取り組みにおいて,筆者らが開発した咀嚼能力測定法を「モノサシ」として応用した事例をみていこう.子どもの咀嚼能力は大丈夫か? 加工食品や洋食献立の普及により軟らかい食物を好む習慣が浸透したことが,子どもの咀嚼能力の低下を招いていると言われている.しっかり噛まずに飲み込んでしまう習慣が身についてしまった場合,もっとも肥満しやすい食行動のひとつである早食いの獲得に結びつくことになることから,早い時期に防止・矯正することが望ましい. 澤井ら1は,小学校6年生の児童を対象に咀嚼に関する訓練指導を行い,咀嚼能力測定法(手動法:連載第1回参照)を用いてその効果を検討した.すなわち,歯ごたえのあるガム(DAY-UPオーラルガム,ライオン社)を用いた咀嚼訓練を行ったクラス(介入クラス,39名)と,行わなかったクラス(対照クラス,38名)で,咀嚼能力(咀嚼能力測定用グミゼリー30回咀嚼後のグルコース溶出量)の変化を比較した(図1).52the Quintessence. Vol.32 No.10/2013—2102

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です