ザ・クインテッセンス11月
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矯正拒否患者に対する補綴的対応THE APPROACH TO ESTHETIC DEMAND107はじめに 患者の多くは,口腔内に対して何かしらの問題を感じたときに来院する.しかしそれはあくまで「患者にとっての問題」であり,必ずしも「術者の目からみた問題」と一致するとは限らない.またその背景には,初診時には術者も知り得ない「潜在している問題」が存在している可能性もあり,歯科医師はそれら3つの問題のギャップと解決法に悩まされることになる. なかでも,審美障害が主訴の患者では,時として自分の理想形を安易に要求してくることもあるが,往々にしてその難易度は高いことが多い.しかもわれわれが提案した治療計画がすべて受け入れられるとは限らず,歯科医師は限られた範囲でのゴール設定と治療計画を余儀なくされることも多い. そのような「患者にとっての問題」と「術者の目からみた問題」のギャップを生む原因の1つに“歯のポジション”の問題があると筆者は考える.審美修復治療においては,歯列,ジンジバルレベル,歯肉カントゥア,歯冠形態,色調が重要となるが,そのほとんどの項目に歯のポジションが関係している. よって,歯のポジションに問題がある場合,その改善なくして理想的なゴールを達成することは難しく,「術者の目からみた問題」の改善に矯正治療が必要となる場合が多い.しかし現実的には,審美改善が主訴で来院した患者が矯正治療を受け入れてくれる率は高くはない.矯正が拒否されたとき,筆者は治療自体を拒否することもあるが,補綴的対応によって許容できるゴール設定が可能ならば,それを患者に提案することもある.いわゆる“苦肉の策”だが,そのような治療計画立案は誰しもが少なからず経験するところであろう. 本稿では,術者が矯正治療を必要と判断したにもかかわらず拒否され,補綴的対応の範囲でゴールをめざした症例について,そのステップの解説を試みたい.矯正拒否患者に対する補綴的対応─患者・術者・潜在的問題を考慮したアプローチの実際─西山英史東京都開業 西山デンタルオフィス連絡先:〒107‐0052 東京都港区赤坂3‐4‐3 赤坂GATEWAY 2FEsthetic and Functional Reconstruction without Orthodontic Procedureキーワード:矯正拒否患者,補綴的対応,ミッドライン,クラウンカントゥアHidefumi Nishiyamathe Quintessence. Vol.32 No.11/2013—2379

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