ザ・クインテッセンス11月
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“歯科医のための”内科疾患ファイルシェーグレン症候群とは シェーグレン症候群(Sjögren's syn-drome:SS)は,眼球および口腔乾燥症状を主訴とする症候群で,外分泌腺,とくに涙腺や唾液腺が障害されて起こってくる自己免疫性疾患であり,膠原病の1つと考えられている.1994年に厚生省疫学調査研究班と自己免疫性疾患調査研究班との合同調査の結果,SS患者の男女比は約1:20と圧倒的に女性に多い疾患であることが明らかになり,2002年時点でわが国のSS患者数は78,000人と推定された.しかし,米国のSS患者は200万人と推定され,米国人口が2億8000万人であることから我が国には推定で100万人のSS患者が存在することになる.これは,おそらくは潜在的なSS患者の数を入れてのことになると考えられる. SSには,他の膠原病疾患が合併することが多い.とくにそのなかでも,関節リウマチ(RA),全身性エリテマトーデス(SLE),強皮症(SSc),多発性筋炎(PM)/皮膚筋炎(DM)といった膠原病が多く,また膠原病以外でも原発性胆汁性肝硬変(PBC)や橋本病などを合併することも多く,このようなSSを二次性SSと言い,43%程度を占める.SS単独のものが57%程度あり,これを一次性SSと言う.シェーグレン症候群の症状 基本的には,SSは外分泌腺に炎症の主座があるために機能障害に陥る疾患で,その点において内分泌腺の機能障害が疾患の主座である糖尿病や甲状腺疾患と異なる点である.外分泌腺には唾液腺,涙腺,汗腺などが含まれ,SS患者ではこれらの外分泌腺からの唾液,涙,あるいは汗の分泌が低下する. そのなかでも,とくにSSの臨床症状として注目されるのが腺症状と腺外症状である.外分泌腺の障害によって生じる眼乾燥症状(ドライアイ),口腔乾燥症状(ドライマウス)がSSの主な腺症状である.眼乾燥症状には,目の乾燥感(目がゴロゴロする等),目の痛み,目の疲れ,眩目感といったものが含まれ,一方で口腔乾燥症状には,口の乾き,舌の荒れ,口が上手く回らない,舌の痛み等の症状が含まれる.また,眼・口腔以外の乾燥症状として気道乾燥,皮膚乾燥,性器乾燥症状等も合併することが多い.また,耳下腺腫脹,額下腺腫脹もSSの腺症状の1つといってよいであろう. SSは膠原病の1つであり,当然腺症状以外の腺外症状も,頻度は他の膠原病と比較して低いが合併することがある.具体的には,関節痛・筋痛(22%),白血球・血小板減少症(12%),発熱(5%),発疹(3%),レイノー現象(3%),間質性肺炎(2%),間質性腎炎(2%),悪性リンパ腫(2%)等を認めることがある.シェーグレン症候群の発症機序 これまでの研究から,SS発症の最初のきっかけは何らかの原因による外分泌腺へのリンパ球浸潤にあると考えられている.浸潤したリンパ球によって外分泌腺に慢性の炎症が生じ機能低下に陥ると推測されている.その機序の中でもとくに外分泌腺周囲のCD8+T細胞がαEβ7,E-カドヘリン系を介した接着によって腺管細胞をアポトーシスに陥らせることによってSSが発症し(Fujiwara, et al. J Immunol 1999),これにはE-カドヘリンのドメイン5が関与することが報告されている(Shiraishi, et al. J Immunol 2005)(図1). その一方で,SSの亜型とされ口腔乾燥症状は軽度であるも著明な唾液腺・涙腺腫脹を呈するミクリッツ病患者外分泌腺の腺管周囲に浸潤するリンパ球では,FasLを欠損あるいは発現が低下するためにアポトーシスに陥らず,著明なリンパ球増殖を呈することが報告され(Tsubota, et al. Clin Exp Immunol 2002),これはミクリッツ病患者リンパ球のFasLFile11シェーグレン症候群津坂憲政 (東京歯科大学内科学講座)浮地賢一郎( 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座)【監修】西田次郎(東京歯科大学内科学講座)片倉 朗( 東京歯科大学オーラルメディシン・口腔外科学講座)連絡先:〒272‐8513 千葉県市川市菅野5‐11‐13142the Quintessence. Vol.32 No.11/2013—2414

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