ザ・クインテッセンス12月
6/8

特集2完全理解!歯科医師に必要な睡眠と呼吸の基礎知識外木守雄*1/鈴木雅明*2/磯野史朗*3/鮎瀬卓郎*4/對木 悟*5/岩崎智憲*6/山﨑要一*7*1日本大学歯学部口腔外科学講座/日本睡眠歯科学会理事長*2帝京大学ちば総合医療センター耳鼻咽喉科*3千葉大学大学院医学研究院呼吸・循環治療研究講座麻酔科学領域*4長崎大学大学院医歯薬学総合研究科医療科学専攻展開医療科学講座歯科麻酔学*5 公益財団法人神経研究所附属睡眠学センター研究部/東京医科大学睡眠学講座/ 睡眠総合ケアクリニック代々木*6鹿児島大学医学部歯学部附属病院小児歯科*7鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学分野*1代表連絡先:〒101‐8310 東京都千代田区神田駿河台1‐8‐13Morio Tonogi, Masaaki Suzuki, Shiroh Isono, Takao Ayuse, Satoru Tsuiki, Tomonori Iwasaki, Youichi YamasakiBasical Learning of Sleep & Breathing for Dentistキーワード:Basical Learning,Sleep & Breathing Disorder,Dental Sleep medicineはじめに 外木守雄 睡眠中に,無呼吸,低呼吸が発生して,血中酸素飽和度が低下し,苦しさから,睡眠が分断される病態を閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群(OSAHS)という.これは,睡眠障害のうち睡眠関連呼吸障害に分類される.睡眠障害には,①不眠(Insomnia)② 睡眠関連呼吸障害(Sleep related breathing disorders)③ 中枢性の過眠症,ただし概日リズム睡眠障害,睡眠時呼吸障害,夜間熟眠困難の他原因を除く(Hy-persomnia of central origin not due to a circadian rhythm sleep disor-der, sleep related breathing dis-order, or other cause of disturbed nocturnal sleep)④ 概日リズム睡眠障害(Circadian rhythm sleep disorders)⑤睡眠時随伴症(Parasomnia)⑥ 睡眠時運動障害(Sleep related move ment disorders)⑦ 独立した症候群(一見,正常のように見えるが解決できない問題を含んでいる)(Isolated symptoms, apparently normal variants, and unsesolved is-sues)⑧ その他の睡眠障害(Other sleep dis-orders)があり,これらの除外診断なくして,口腔内装置などの局所治療を先行することはきわめて危険である. 2004年にOSAHSに対する口腔内装置が保険導入されたが,その際,医科からの口腔内装置の適応診断が,前提となるのはこのためである. しかし,このことは,歯科医師が医師の指示のもと口腔内装置を下請けするものではない.歯科医師による適切な病態診断のもと適切な治療計画を策定することが重要となる. とくにOSAHSの原因には顎顔面形態が深く関与していることが知られ,近年,睡眠呼吸障害が発生するリスクの高い小下顎症は,顎の発育時期に適切な顎拡大を計画し,閉塞性の呼吸障害を早期に改善しておくという考え方が提唱されている. 顎の発育に呼吸,舌癖など生理機能の安定が関連することは,矯正歯科,小児歯科の分野では,古くから知られていたことで,筋機能や呼吸機能療法が行われてきた. しかし,われわれ歯科医療従事者はまだまだ睡眠と歯科医療は別物との認識があるためか,いまだに,睡眠歯科が普遍的な歯科治療となっていないのが現状である. そこで,わが国を代表する4名の睡眠医療専門医と顎発育の立場および歯科麻酔医の立場から「睡眠と呼吸の基礎知識」を解説いただき,読者にわかりやすく学んでいただく企画とした. この病気を根本的に治す手段のひとつをもっているのは歯科医師であることから,今後の発展が大いに望まれるものと考える.94the Quintessence. Vol.32 No.12/2013—2596

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です