ザ・クインテッセンス9月
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開業医だからできるかかわり方認知症へのFEATURE特 集 1猪原 健広島県勤務 猪原歯科医院連絡先:〒720‐0045 広島県福山市室町5‐18 「明日の記憶」という映画をご存知だろうか? 荻原浩が山本周五郎賞を受賞した同名小説を元に,2006年に渡辺謙の主演で映画化されたこの作品は,アルツハイマー型認知症と診断された当の本人が主人公として描かれる数少ない映画である.『順風満帆な人生を送っていた49歳の広告代理店のやり手営業マン・佐伯(渡辺謙)は,突如,ひどい物忘れやめまい・幻覚などの不可解な体調不良に襲われる.妻に促され,しぶしぶ受診した病院で若年性アルツハイマーの診断を受け,自殺を試みようとするまで追いつめられるが,最後には妻とともに病気と向き合う覚悟を決める』──以上がごく簡単なあらすじだが,筆者の駄文にお付き合い頂くよりも,この映画を見た方が認知症の人の気持ちを理解するのに大きく役に立つのは間違いない. とくに「認知症かもしれない」という疑いが,「診断」という現実となって突きつけられたときの動揺…….筆者自身も,極めて近い親族に鬱症状が出て,やっとの思いで説得して連れて行った精神科において,担当医から「認知症の初期症状かもしれない」という説明を受けてしまったときには,まず現実を受け入れることができず,人知れず狼狽し,その後もなんとも言えない不安感が続いたという経験がある.幸い認知症ではなく,治療により現在は楽しい日常生活を取り戻しているが,認知症は決して他人事ではないと強く思うきっかけとなった.本稿では,このような筆者の少しばかりの経験も含めて,認知症の人への歯科のあり方を記そうと思う.はじめに──映画「明日の記憶」56the Quintessence. Vol.33 No.9/2014—1900

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