ザ・クインテッセンス1月
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昨今の日本における超高齢化は目を見張る勢いで進んでいる.そして超高齢社会において高齢者の歯科への要求は多様化し,われわれ歯科医師もその対応に苦慮することもしばしばである.現実問題として,高齢者では健常な状態であれば若い人たちと診療や口腔ケアにおいて何ら変わらないが,ひとたび有病高齢者や要介護高齢者になると,全身症状との兼ね合いで診療上行えることとそうでないことが混在してくる.とくに介護と医療の区別をつけにくくなっていることもその一因と考えてよいであろう.そして行った処置の予後をいつまで設定しなければならないかと考える必要があるケースも多く見られる. 具体的にいうと,本来はできるだけ抜歯を避けて歯を守ることが歯科医療の根幹であるが,いったん健常でない状態すなわち有病高齢者になり自立が困難になると,残した1本の歯が残存諸組織に為害作用を及ぼすケースが頻繁に起こるのである.よって,健常な状態の時に抜歯や抜髄処置を行い,有病高齢者になり自立できなくなったときに全身状態への影響をできるだけ少なくして咀嚼機能の回復が行えるようにしておくことも1つの有効な手法である. このように,有病高齢者に対する介護や福祉が手厚く行われるようになった現在では,最高の処置が最善の処置であるとは言えなくなってきたことは事実であろう.はじめに:超高齢社会における歯科の多様性死ぬまで自分で食べられる⬇健常な状態で寝たきりなら看病できるメインテナンスが最重要最終目標リハビリテーションどうするかは患者マター,例)クラウン,インレー,CR等 ここで初めて,形成やボンディング剤をどうするかという話がでてくる.なお,材料だけでなく,歯科医師のテクニックと材料の生み出した結果(患者の口腔内で長く機能し,噛める,食べられる)が歯科医療の価値を高めるという共通理解が不可欠.CHECK1 噛めるとは,食べられること.ただ義歯を入るだけではダメ.また,義歯が合わないというのは口腔乾燥症が疑われることもあるなど,体の知識も網羅する必要がある.CHECK2 生物学的原則に則れば保険治療・自費治療というような区分けはない.患者の口腔内に装着するものは,すべてまっとうにつくらなければならないのは当たり前.CHECK3つまり しかし現在の歯科医師は,疾患があれば口腔内しか見ずにただ治療をするという方が多いといわれている.しかしそれでよいはずがない.今こそ,歯大工ではなく,病気を生物学的にみて,ただ口腔内を治すのではなく患者の生涯にわたる健康に寄与することが重要なのではないか? そして,DOSとPOSをもう一度きちんと理解すべきではないのか?83the Quintessence. Vol.34 No.1/2015—0083

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