ザ・クインテッセンス2015年3月
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144中島稔博Verification of My Debut Case Published after 7 Years, and a State of My PracticeToshihiro Nakashima福岡県開業 なかしま歯科クリニック連絡先:〒808‐0001 福岡県北九州市若松区小石本村町13‐14長期安定性を体現するために必要な配慮を考えるthe Debut症例7年後の検証と現状からAfterthe Debutキーワード:根尖病変,根管拡大,歯肉退縮,経過観察the Debut掲載時を振り返って 当時35歳であった筆者が,症例をある発表会で提示させていただいた際,「the Debutに投稿してみないか?」という誘いを頂戴し,その当時はプレッシャーとともに,「筆者のような田舎の歯科医師が,このような全国誌に症例を提示できる」と興奮も覚えた.しかし,日本屈指の臨床家による査読により,投稿論文のリジェクトかアクセプトかが決定される,非常にシビアな投稿欄であると,原稿を執筆する過程において強く感じたのを今でもよく覚えている.当時「根尖病変と歯肉縁下う蝕への対応」というタイトルで原稿を投稿したが,1名アクセプト,1名リジェクトということで,再度原稿を書き直し,3名目の査読委員の先生にかろうじてアクセプトしていただき投稿へと漕ぎ着けた.投稿論文とは,単なる症例提示の場ではなく,それに対する裏づけやテーマに沿った論文の展開が必要なこと,また1つの考え方に凝り固まることなく,臨床では大きな視野をもって臨まなければならないことも,査読委員の先生のコメントを通して学ばせていただいたと感じている.「the Debut」症例:サマリー 患者は2005年5月31日,上顎左側臼歯部の自発痛を主訴に当院を来院した当時59歳の女性である.デンタルエックス線所見にて,多量の歯石沈着,不良補綴物,多数歯にわたる根尖病変が認められた.TMD症状などは認められなかったことから,当時は大きく顎位を変更する必要のない症例と判断し,不良補綴物の除去,根管治療,歯周基本治療後,生物学的幅径の改善,骨縁下欠損の改善のための歯周外科処置を行い,最終補綴物を装着した. この症例では下顎前歯部を除いたすべての部位に歯周外科処置を行った.上顎前歯部は,₃歯肉縁下う蝕に対して矯正的挺出を行った後に,臨床歯冠長延長術を行った.しかし,結果として,₂にフェルールの不足が生じてしまった.周囲との骨レベルや,術後の歯肉レベルを考慮すれば,矯正的挺出などの限局矯正治療を併用したアプローチが必要であったと考えられる.現在であれば顎位や咬合平面などをもう少し診査してその術式選択をするであろう(図1,2).the Quintessence. Vol.34 No.3/2015—0588

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