ザ・クインテッセンス2015年4月
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FEATURE特 集 1鶴見大学歯学部歯内療法学講座連絡先:〒230‐8501 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2‐1‐3細矢哲康Root Canal Treatment for the ElderlyNoriyasu Hosoyaキーワード:高齢者,歯内治療,狭窄根管,ストレートラインアクセス,在宅訪問診療はじめに 日本人の平均寿命は医療の進歩や介護の充実から飛躍的に向上したが,80代以降においても自立して生活を送る高齢者は決して多くない.そのため現在の医療は長寿ばかりを目指すのではなく,健康寿命の保持にその焦点をシフトする傾向にもある1.歯科医療関係者にとっては,咀嚼と脳血流量の関係やこれにともなう学習力や記憶力の変化,あるいは口腔内環境と認知症の関係について広く周知されており,健康寿命の延長における歯科医療関係者の果たす役割はますます大きくなる. 生涯を通じて自分の歯で食べ,満足できる食生活を送るために,平成元年に厚生省(当時)と日本歯科医師会が提唱して開始された8020運動は,現在も引き続き推進されている.この運動は当初の予定より5年ほど早く目標が達成し,平成23年には8020達成者が約38%となり,運動開始時の5%に比べると著しい向上が認められる.しかし高齢者人口の急速な増加はその後も続いていることから,8020に達していない高齢者の絶対数は増加する傾向にあり,不自由な生活を送る高齢者が少なくないのも実態である.また多数歯欠損を有する場合でも,種々の補綴装置により口腔機能のリハビリテーションが施され,適切に咀嚼ができれば義歯装着者であっても健康状態は高いという報告もある. 歯の喪失理由はう蝕関連が32%,歯周病関連が42%,歯の破折が11%程度であるが,う蝕や破折に歯内療法領域の疾患や治療が大きくかかわっていることはもちろんのこと,未処置の感染根管が歯周組織あるいは歯周疾患の治療に影響を与えるとの報告2もあり,高齢者が少しでも多くの自分の歯を保存するためには,確実な歯内療法の実施が肝要である.超高齢社会を迎えた今だから知っておきたい高齢者における歯内治療38the Quintessence. Vol.34 No.4/2015—0700

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