ザ・クインテッセンス2015年4月
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人口構造の変化や疾病構造の変化は,う蝕有病率の低下やう蝕初発平均年齢の上昇などに影響を与えたが,本邦では全世代にわたり高頻度で繰り返される再歯内治療の状況に大きな変化はない.政府統計を発表するe-Statの平成25年6月の統計結果から推計すると,年間約6,720,000歯の抜髄処置と約8,280,000歯の感染根管処置が行われていることになる.感染根管処置は,外傷や歯髄炎に経発した歯の失活に対して行われたもの以外に,再治療症例が非常に多いことは,臨床家の誰もが日常の治療から感じているのではないだろうか.再歯内治療の理由には,再度の感染に加え以前の不十分な治療などが考えられるが,原因の多くが感染の取り残しや治療中における再感染ならびに重感染である可能性も考えられる.すなわち,歯科医師が行う治療自体が大きく関与している可能性が大きい. 歯内領域の疾患においては,高齢者と成人との間に本質的な違いはないものの,高齢者に対して歯内治療を施す場合には,高齢者における歯髄疾患や根尖性歯周組織疾患の特徴を理解する必要がある3.また全身的な状況の把握に加え,歯の解剖学的特徴や治癒能力の変化に対しての考慮と対応が非常に大切である(図1).すなわち高齢者における歯内領域の症例は難治化することが多く,ライフステージに合わせた処置が術後経過に大きく影響を及ぼす.前述したが,20歯以上を保有する高齢者の割合の予想以上の向上と高齢者人口の増加は,歯内療法において難治症例化する要治療歯が確実に増加することでもある.◦高齢者における歯髄疾患,根尖性歯周組織疾患の特徴◦既存の疾患と全身的状態◦高齢者の歯の解剖学的特徴◦加齢による治癒能力の変化高齢者における歯内療法で考慮すべきポイント高齢者における歯内治療1図139the Quintessence. Vol.34 No.4/2015—0701

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