ザ・クインテッセンス 2016年7月
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わかっていることいないこと,今できること覚醒時ブラキシズムTCHとFEATURE特 集 1 読者のなかには,次のような経験または患者が来院したことはないだろうか.ケース1:歯周病の治療において,ブラッシング指導や歯石除去など「細菌」のコントロールをきちんと行うことはもちろんのこと,さらにナイトガード(スプリント)を用いてブラキシズムもコントロールしているのに,歯周病が思うように改善しないということを経験したことはないだろうか(図1a). ケース2:顎関節症に対する治療の第1選択として,スプリントが用いられることが多い.しかし,スプリントを用いているにもかかわらず,なかなか顎関節症の症状が改善しないということを経験したことはないだろうか(図1b).ケース3:視診や触診,画像検査を行っても,う蝕や歯周病,根尖病変など感染を疑わせる原因が見いだされないのに,歯が痛む,それも起床時ではなく日中や夕方に痛み出すと患者に相談された経験はないだろうか(図1c).ケース4:可撤性義歯を使用している患者で,何度調整しても床下粘膜の痛みがとれない,あるいはずっと義歯を装着していると窮屈になってくるので外したくなるといわれた経験はないだろうか(図1d). 上記のような兆候や症状がある場合,起きている間に生じている“力”の問題が潜んでいる可能性があり,このときの“力”の元になっているのが「覚醒時ブラキシズム」である. 近年,覚醒時ブラキシズムの1つと東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔顔面痛制御学分野連絡先:〒113‐8510 東京都文京区湯島1‐5‐45西山 暁キーワード:覚醒時ブラキシズム(TCH),くいしばり,TCHコントロールAwake Bruxism and TCH : The Known and Unknown Fact and What can be done NowAkira Nishiyamaはじめに:その症状,覚醒時ブラキシズムのせいかもしれません!して上下歯列接触癖(Tooth Contacting Habit:TCH)が注目されている1.その概念やコントロール法が,学会はもとより商業誌でも紹介されるだけではなく,勉強会も開催されるなど,ちょっとしたブームを迎えている. しかし,ブームになったぶん,提唱者や研究者の本来の思いをよそにTCHという言葉が独り歩きを始めており,その紹介には拡大解釈や正確性,客観性を欠いたものも散見されるようになっていると感じている. TCHを「怪しいもの」としないためにも,本稿では,一般臨床家に向けて覚醒時ブラキシズムおよびTCHについて学術的な整理を行うことで,その正確な理解を促したいと考えている.42the Quintessence. Vol.35 No.7/2016—1530

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