ザ・クインテッセンス 2016年7月
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はじめに 歯科医師に女性の占める割合が増加してきたことは周知の事実である1,2.医師については医師不足が社会問題化したことから,女性医師の問題が国レベルで比較的早期から検討されてきた3.しかしながら女性歯科医師については,そのような機会が設けられないまま推移してきたが3,4注1 注2,男女協調参画社会の実現に政府が力を注ぎ始めたことや女性歯科医師が増えてきたという背景のもと,厚労省では昨年より開始された「歯科医師のあり方検討会」の下部組織として「女性歯科医師の活躍に関するワーキンググループ」4を設置し,女性歯科医師の働き方に関する議論が開始された. しかしながら,昨今の女性歯科医師の問題は「女性の問題」という文脈で論じられてきたきらいがあり,「歯科医療の供給」という観点で論じられることは少なかったように思われる. 女性歯科医師の問題が昨年まで国レベルで議論されてこなかった理由は,歯科医師では医師のように不足が社会問題化していなかったことによるが注15,歯科医師の多数を占めている「1人開業の男性歯科医師」が大量引退するころに歯科医療供給体制が大きく変化する可能性が高く,「女性歯科医師の働き方」が歯科医療供給における主要問題となりえる. 以上の問題意識から,本稿では,第1に政府統計(医師・歯科医師・薬剤師調査)から得られた女性歯科医師数に関するデータを紹介し,第2に女性歯科医師の働き方について現状で得られている知見を述べたうえで,第3に女性歯科医師が増えてきたことが今後の歯科医療供給に与える影響について私見を述べる.1.データでみる女性歯科医師数1)女性歯科医師数の変遷 図1に男女別にみた歯科医師数と女性歯科医師の割合の推移を示す.女性歯科医師の数は一貫して増加傾向にあるが,男性では1990年代後半から増加傾向が頭打ちとなった.そのため女性歯科医師の割安藤雄一Yuichi Andoキーワード:女性歯科医師,歯科医師数,歯科医師の供給,政府統計国立保健医療科学院連絡先:〒351‐0104 埼玉県和光市南2丁目3‐6データでみる女性歯科医師数の変遷と今後の見通し歯科医療供給の観点からData130the Quintessence. Vol.35 No.7/2016—1618

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