ザ・クインテッセンス 2016年9月
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ンという手法を用いることでそのズレを最小化することができ,精度の向上と治療期間の短縮に成功した.これは従来の方法と大きく異なる点であり,患者,歯科医師のみならず,歯科技工士にとっても大きな福音になると考えている. 今回は重度歯周疾患により咬合崩壊をきたした症例に対し,CAD/CAMを用いて咬合再構成を行った.本症例をとおして,CAD/CAMを的確に使用することで,より精確で簡便な補綴操作が可能となることを経験し,ここに報告させていただく.咬合再構成にCAD/CAMを有効利用するために必要な項目は? 咬合再構成にCAD/CAMを応用する場合,以下の3項目に注意する必要がある.① 1歯単位での適合精度(CAMによる削りだしを意識した滑らかな支台歯形成と印象)② 歯列単位での精確な模型製作(歯列のアーチ,コンタクトなど)③ 咬合単位での精確な咬合面の付与(補綴物の上下顎同時製作,精確な咬合採得) 1つめの1歯単位での適合精度に関しては各メーカーより多くの情報があるため,本報では割愛し,②以降を詳しく説明させていただく. 今回提示する症例においては,補綴物のマージンは審美性やカリエスリスクなどを考慮し,すべて歯肉縁下に設定したため,明瞭なマージンライン獲得のために印象採得は2重圧排法を採用している.このような場合,歯肉へのダメージや印象材の寸法変化の問題により,全顎の印象採得を一度で行うことは筆者の臨床では不可能である.そのため,1歯単位での印象採得をブロックに分けて行っている. 咬合再構成時には,それぞれの支台歯の模型を1つの作業模型とする必要がある.さまざまな方法が提唱されているが,当院ではトランスファーコーピング法を用いて行っている.この方法は支台歯1つずつにパターンレジンにてキャップをつくり,口腔内に装着してピックアップ印象を行うという手法である.注意点としては,確実に支台歯に戻り,浮き上がりやズレがないかを確認することが挙げられる.支台歯の位置関係にズレが生じていると,この後の作業がすべて無駄になるため,術者1人ではなく,歯科技工士を含めた数人で確認するのがよい.そうすることで1歯単位の作業模型を1つの歯列模型とすることができる.そしてその作業模型上でもう一度パターンレジンで連結したキャップをつくり,口腔内にて再度適合状態を確認するようにしている.これは模型が精確にできているのかを確認するため99the Quintessence. Vol.35 No.9/2016—2059

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