ザ・クインテッセンス 2016年10月
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考える三次元的下顎位Celenza3,Vincelli4らがこの定義に疑問が投げかけた.またDawsonら5によっても最後方の中心位を否定する論文が発表された.そして現在では「下顎頭が関節円板の最薄部とともに下顎窩の前上方に位置し,関節結節に接しているときの上下顎の位置関係」と定義されている.しかしながら,患者は個々に歯や歯槽骨の崩壊,咬合高径の低下,下顎頭の変形や靭帯の弛緩,筋の緊張などのさまざまな問題を抱えており,実際の臨床においては咬合高径や下顎位の決定に対して確固たる一義的な手法は今もって存在しないと考えられる.すなわち,われわれ臨床家は,現存するEBM(Evidence Based Medicine)を踏まえつつも,NBM(Narrative Based Medicine)から患者の口腔領域に潜む問題を見つけ出し,個々の患者に最適な治療計画を立案しなければならないこととなる. 本稿では,このことを前編と後編の2回に分けて考察してみたい.*本稿の口腔内写真および顔貌写真は,すべて患者の了承を得て掲載.55the Quintessence. Vol.35 No.10/2016—2241

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