ザ・クインテッセンス 2016年11月
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40the Quintessence. Vol.35 No.11/2016—2480石井彰夫Dental Practice Which Visualizes to Be Able to Chew or NotAkio Ishiiキーワード:咀嚼能力,咬合再構成,可視化,機能評価岡山県開業 石井歯科クリニック連絡先:〒703‐8275 岡山県岡山市中区門田屋敷2‐2‐10はじめに 患者の要望は時代とともに多様化しているが,歯科治療の原則は,生体の条件を考慮しつつ,「炎症」を抑え,「形態」を整え,「機能」を改善し,「審美」を追求することである. 患者本位という側面からは,まずは日常生活に不自由を感じないレベルの機能(咀嚼・発語・嚥下)回復を治療目標に設定するべきである.なかでも咀嚼障害で来院する患者の「噛めない,噛み心地が悪い,快適に食事ができない」といった主訴に対して,各種検査を行い系統的にとらえて評価し,咬合治療がなされるべきである.咬合の検査というと,とかく咬合接触にばかり目がいきがちで,咬頭嵌合位(intercuspal position:以下ICPと略)や限界運動での咬合紙の印記部位を探し,早期接触や咬合干渉と決めつけ,すぐに咬合調整を行う,という姿勢でよいのだろうか? 咬合診断のためには,咬合の5要素(図1)を整理して客観的評価が可能となる“咬合の可視化”を行うことが出発点である.筆者は,機能的側面を重要と考え,よい咬合(表1)を念頭に咬合治療を行うようにしている. 患者の「噛める・噛めない」は主観的感覚であるため,咀嚼能力に関与するパラメータを経時的に可視化して評価することによって,合理的な咬合理論に基づいた咬合治療が行えると考えている.今回,咬合の可視化技術の一端を症例を通じて提示し,臨床的意義について述べてみたい.1真の患者満足とは咀嚼能力の向上である1 咀嚼能力とは? 咀嚼には,嚥下するまでに,摂食,咬断(切断),粉砕,混合,食塊形成,嚥下などのさまざまな機能があり,各機能は独立したものではなく,相互に関連・影響し合っているため,咀嚼能力を客観的,定量的に評価して判定するには,いくつかのパラメータを検証「噛める・噛めない」を可視化する歯科臨床FEATURE特 集 1

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