ザ・クインテッセンス 2016年11月
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初診時概要患者:43歳,女性主訴:歯が抜けそう歯科的既往歴:月に1回定期検診を他院で受診していたので歯周病については安心していた.しかし,だんだんと歯の動揺が生じ,前医に相談したところ,抜歯と言われて不信感を抱き,当院に来院.喫煙歴:なし症例概要 患者の主訴である₁~₃は,二次性咬合性外傷によりフレアーアウト(図1,2)をしており,咬合痛もあった.₂~₆には垂直的な骨吸収(図3,4)が顕著にみられた.また₇₆と₆にも垂直性の骨欠損がみられる.根分岐部病変は認められないが,下顎前歯部に叢生がみられる.口腔清掃状態は月に1回メインテナンスを受けるほどモチベーションが高いため良好であったが,歯肉縁下歯石が大量に付着していた.臼歯部の咬合関係は左右ともAngleⅢはじめに 中等度〜重度歯周病が進行した場合,初診時には保存困難と診断した歯でも徹底した歯周基本治療と暫間固定,咬合調整やスプリントの結果,炎症と力のコントロールが図られ,適切な歯周組織再生療法により保存可能となる場合がある.それゆえ,抜歯や歯冠形成による連結固定(歯質の削除)などの不可逆的な治療は,初期治療後の組織の反応をみて最終的に治療計画を立案するようにしている. また,歯周治療は自覚症状が乏しく,治療期間が長期になることが多いため,「なぜこの歯が悪くなったのか」などの原因や治療内容を患者に十分に理解していただき,治療を開始することが重要である.加えて患者には治療中,治療後の患者と術者双方の役割を認識してもらい,それぞれが同じゴールを目指すことが大切である. 今回は患者から「歯を抜かずに残してほしい」という強い要望と再度の治療介入時に次の治療オプションを残すという観点から,再生療法にて歯の保存に努めた一症例を提示する.New Essence:the Debut若手歯科医師・投稿欄 本欄ではエビデンスに基づいた患者本位の医療,最小の侵襲で最大の効果を得るという考え方に則った治療に重点を置き,患者のための真の医療とは何かを明らかにしていく.歯周組織再生療法を用いて歯の保存に努めた症例成 仁鶴キーワード: 再生療法,骨外科処置,歯周補綴A Case Report Using Regenerative Therapy for the Patient with Moder-ate to Severe Periodontal DiseaseJinkaku Sei千葉県開業 つかだ歯科医院連絡先:〒273‐0042 千葉県船橋市前貝塚町535‐1 ソレイユ華1F 1998年北海道医療大学卒業.臨床18年,開業12年.目の前の患者のために過去の症例を振り返り,なぜだめになったのかを追求し,同じ過ちを繰り返さないように日々邁進している.そのなかで長期症例を多く作り,患者に本気で喜んでいただける治療をすることを目指している.154the Quintessence. Vol.35 No.11/2016—2594

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