ザ・クインテッセンス 2016年11月
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はじめに 歯の保存が不可能な疾患は,歯冠修復が困難な大きさのう蝕および高度に進行した歯周病である.この他に,歯根吸収および歯の破折があると抜歯の適応を考えなければならない.根管治療を開始する前,すなわち術前の診断においてこれらを鑑別しておく必要がある.歯の破折は従来から臨床家を悩ませているが,歯根吸収は気がつかないことが多い.1歯根吸収の分類 歯根吸収とは象牙質の吸収のことで,表1のように分類される.内部吸収と外部吸収があり,歯髄腔から吸収するのが内部吸収,歯周組織の方から吸収するのが外部吸収である.エナメル質,セメント質,象牙前質は吸収されにくい.2内部吸収 内部吸収は外傷に起因するものもあるが,特発性,つまり原因不明のものも多い.歯髄腔の内面を電子顕微鏡で調べ,歯髄炎の状態に応じて分類した1のが図1である.30本と被験歯数は少ないが,健康歯髄では吸収はなく,歯髄炎があると吸収が進行する傾向があった.内部吸収は歯髄中の細胞が象牙質を侵蝕して起こる(図2)ので,歯髄がなくなれば進行は停止する.すなわち,治療は抜髄である.発見したら,直ちに抜髄しなければならない(図3~7).矯正治療で根尖が短縮化する歯根吸収は内部吸収が原因の場合があるといわれている(図2D,本連載9月号173ページ図83~85参照).東京都開業 吉岡デンタルオフィス連絡先:〒101‐0062 東京都千代田区神田駿河台2‐3‐13 鈴木ビル1F吉岡隆知臨床で困らない歯内療法の基礎第11回 歯根吸収,歯の破折卒後3年以内に読む!表1 歯根吸収の分類吸収の種類発症の生じ方内部吸収歯髄が象牙質を吸収外部吸収 表面吸収 炎症性吸収 置換性吸収(アンキローシス) 歯頸部外部吸収 根尖性吸収有髄歯にも無髄歯にも発症164the Quintessence. Vol.35 No.11/2016—2604

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