ザ・クインテッセンス 2016年12月
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インプラント治療後の維持管理GPはインプラント周囲炎にどう対応?基礎と臨床からみるFEATURE特 集 1北海道開業 みかみ歯科・矯正歯科医院連絡先:〒053‐0018 北海道苫小牧市旭町4‐7‐20*東京歯科大学名誉教授連絡先:〒261‐0011 千葉県千葉市美浜区真砂1‐4‐16三上 格/下野正基*Consideration of Maintenance after Implant Treatment from the Viewpoint of Pathology and Clinical PracticeItaru Mikami, Masaki Shimonoキーワード: インプラント,粘膜,メインテナンス 臨床において,インプラント治療は欠くことのできない欠損補綴の1オプションであり,多くの患者に咀嚼の改善,審美性の改善,咬合の安定による隣接歯の保護といった多くの恩恵をもたらしてきた.しかし,厳密なメインテナンスを行っていても,患者によってはインプラント周囲軟組織の炎症や周囲骨の吸収といった相反する事象を経験する.これは,インプラントと生体との免疫反応そのものがもつ問題をはじめ,天然歯からの歯周病原細菌の伝播や,患者の高齢化にともなう全身状態の悪化など,さまざまな要因により引き起こされる. インプラント治療後に起こりうるトラブル(合併症)には,インプラント周囲組織が感染を起こす生物学的合併症と,上部構造物が破損する機械的合併症,対合歯への咬合性外傷の3つに分類される.これは,インプラント治療が2つの構成要素から成ることと関係している.1つはインプラント体と接する歯槽骨や角化粘膜などの生体組織との関係(生物学的な要素),もう1つは,インプラント体と上部構造との関係(機械的な要素)から成るためであり,インプラント治療後はこれらを踏まえて,個々の患者に合わせた配慮が必要である. 私たち歯科医師は,インプラント埋入術式,骨増生などの外科手技や補綴治療などに目がいきがちであるが,患者の時間軸でみればそれらは一時の出来事に過ぎず,治療後のメインテナンス期間のほうが長い.また,筆者の臨床実感では,インプラント埋入前より補綴後のほうが術者にかかるストレスは大きく,上部構造の脱離やポーセレンのチッピングといった頻度の高いトラブルや,インプラント埋入後10年近く経過した患者にみられるインプラント周囲組織からの出血や排膿といったトラブルで肝を冷やす.その意味で,インプラント治療後のメインテナンスは合併症との戦いの期間と捉え,メインテナンスもインプラント治療の一環であり,「インプラントは治療後からが大切」と考えている. 本稿では,インプラント治療後に起こりうる合併症であるインプラント周囲粘膜炎およびインプラント周囲炎に注目し,その病態の理解と国内薬事に沿った対応法を整理し,臨床家(GP)がどう対応すべきかについて,基礎と臨床の観点から解説する.はじめに48the Quintessence. Vol.35 No.12/2016—2726

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