ザ・クインテッセンス 2016年12月
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はじめに う蝕,根尖性歯周炎といった歯内療法疾患の多くは細菌が関与する.細菌の侵入経路を考えるのがエンドドンティックリーケージである.リーケージは「漏洩」と訳される.漏洩の経路を見つけて封鎖すれば,多くの症例は治癒する.「経路を見つける」ことが診断,「封鎖する」ことが治療である.経路を見つけることなしに治療しても病変は治らない.難治症例となってしまう.エンドドンティックリーケージとは病変の原因を考えることでもある.1歯の漏洩 根尖病変の原因を漏洩と考えると,いろいろなことがわかりやすくなる.漏洩とは,細菌が侵入することといってもよい.隙間の存在,溶液の濃度勾配,圧力差,細菌の移動能などの因子が関与する.歯の構造にかかわる漏洩の経路がある(図1).この他に,歯の破折(図2,3)も漏洩の経路となる.歯冠修復物,築造,根管充填は,どんな名人がいかなる材料を使用していかに精密に行っても漏洩の経路となる(図4~6).漏洩の多寡があるだけで,ゼロにはできない. う蝕がなくとも,外傷などで失活することがある.失活すると歯髄内圧がなくなるために,歯質に欠損がなくともエナメル質や歯頸部から細菌が侵入し,根管が歯周組織に開口するところに病変をつくる(図7~10).2根尖病変の原因 根尖病変には,漏洩に起因するものと,難治化した歯根嚢胞あるいは根尖孔外の感染を有するものが東京都開業 吉岡デンタルオフィス連絡先:〒101‐0062 東京都千代田区神田駿河台2‐3‐13 鈴木ビル1F吉岡隆知臨床で困らない歯内療法の基礎第12回(最終回) エンドドンティックリーケージ卒後3年以内に読む!エナメル質▶▶ 構造欠陥,破折,エナメル葉(叢)象牙質▶▶ 破折,象牙細管根管▶▶ 主根管,副根管(側枝)図1 歯は緻密で均一な組織ではない.エナメル質,象牙質であっても,細菌が侵入できるような電子顕微鏡で確認できる構造(エナメル葉〔叢〕)・象牙細管)が存在する.構造欠陥としかいえないような孔もある.さらに,破折が見られる.破折には,電子顕微鏡でないと見えない微細なものから肉眼で見えるものまでさまざまである.これらの経路を通って侵入した細菌が根管に到達すると,根尖孔までは高速道路に乗ったも同然である.漏洩に関与する歯の構造180the Quintessence. Vol.35 No.12/2016—2858

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