ザ・クインテッセンス 2017年2月
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はじめに 現代の臨床においては,患者からの審美的な治療の要求の高まりとともに,さまざまな“白い”歯冠修復物が開発されてきている.近年,米国で行われた調査1(図1)では,前歯部の単冠においては二ケイ酸リチウム含有ガラスセラミックス(e.max〔イボクラービバデント〕など)が,臼歯部の単冠においてはジルコニアセラミックスを用いたフルカントゥアジルコニアクラウンがもっとも多く採用されている.貴金属価格の高騰などの影響もあってか,メタルセラミッククラウンは前歯部でも臼歯部でも症例数が急激に減少してきており,とくに臼歯部でのジルコニアセラミックスの使用は,今後ますます伸びていくことが予想される. 日本においては,平成26年4月の医療保険改定時に小臼歯部の全部被覆冠に「CAD/CAMレジン冠」が導入され,接着性レジンセメントを使用した歯冠修復物の「接着」は日常臨床でもより重要な地位を占めるようになってきている.しかしながら,近年の報告2では,短期間での脱離も少なからず報告されており,正しい装着法の普及が急務である. 金銀パラジウム合金などの金属材料においては,その物性から破折を危惧することは少なく,従来からの機械的嵌合力に期待した「合着」によって口腔内で十分に機能を果たすことが可能であった.その一方で,金属材料と比較して一般的に破折しやすいセラミック材料やレジン材料は,歯質との「接着」が行われることで一体として機能し,その性能を安定して発揮することができる. しかしながら,高透光性ジルコニアの開発などにより,近頃では肉眼で歯冠色修復物を判別することは難しく,また,それぞれの材料によって処理法が異なっているため,臨床家の間では「明確な接着法の交通整理」を望む声が大きい. そこで本稿では,現在主流となっている1.二ケイ酸リチウムガラスセラミックス,2.ジルコニアセラミックス,3.CAD/CAM冠用コンポジットレジン,のそれぞれの装着操作を適切に行うために,材料別に研究データから得られた知見を基に解説していく.金属0メタルセラミックスフルカントゥアジルコニア陶材前装ジルコニア二ケイ酸リチウム含有ガラスセラミックスリューサイト強化型セラミックスその他■前歯部■臼歯部02004006008001,0001521515549430911596336422557303318■“白い”歯冠修復物の増加!:米国における前歯および臼歯部単冠修復における材料選択の頻度図1 前歯および臼歯単冠修復における材料選択の頻度(2015年,米国調査1).前歯では二ケイ酸リチウム含有ガラスセラミックス,臼歯部ではジルコニアセラミックスが優先的に使用されている.51the Quintessence. Vol.36 No.2/2017—0265

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