ザ・クインテッセンス 2017年4月
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短期連載(全3回)義歯の印象採得を極める!第1回 選択圧印象法の背景連載にあたって:骨を削らない義歯 近年,デジタル機器が歯科臨床とその術式に裨益するところは大きい.補綴歯科臨床においては,光学印象採得がそのトピックスの1つに挙げられる. しかしながら,可撤性義歯における粘膜面の光学印象は,機能圧負担の観点からどのように取り扱うか検討が始まったばかりである.また,デジタル機器による可撤性義歯の光学印象が可能になったとしても,その前段で従来から行われてきた印象採得法の理論的背景への理解は必須である. そこで本連載では,良い義歯とは「骨を削らない義歯」であることを第一義に置き,義歯(全部床義歯,部分床義歯)印象法で推奨されてきた「選択的加圧印象法(以後;選択圧印象法)」1~3について解説を試みる. 「骨を削らない義歯」に必要な他の要件である義歯床外形,および義歯の咬合様式については本連載では触れない.義歯床粘膜面と残遺歯槽堤(顎堤)との接触界面についての話題である.もって来たるべきデジタル補綴時代へ向かいたい.機能圧負担部位 無歯顎顎堤は,義歯による顎堤への機能圧を負担するのに,適している,あるいは不適切とされる部位がある.上顎において適しているのは切歯孔部を除く前歯部および臼歯部歯槽堤であり,リリーフすべき部位は硬口蓋正中部である.下顎において適しているのは頬棚であり,できれば負担域としたくない部位が前歯部および臼歯部の歯槽頂部である(図1,2)4.義歯の動態 顎堤での粘膜厚さは,上顎において約2~4mm,下顎において1.7~2mmほどである(図3,4)5,6.負担がかかった場合の義歯の最大沈下量は約0.3 mmであり,機能圧は上下に等しくかかるので下顎川良美佐雄Improve Your Denture Impression SkillPart1. The Background of Selective Pressure Impression TechniqueMisao Kawaraキーワード:義歯印象法,選択的加圧印象法,無歯顎堤,印象材粘弾性,予備印象日本大学松戸歯学部顎口腔機能治療学講座連絡先:〒271‐8587 千葉県松戸市栄町西2‐870‐1128the Quintessence. Vol.36 No.4/2017—0798

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