ザ・クインテッセンス 2017年5月
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全症)とスと臨床Issei Saitoh, Haruaki Hayasaki Evidence of Lip Closing Insufficiency and Mouth Breathing in Childhoodキーワード: 口唇閉鎖不全症,口呼吸症候群,口唇閉鎖力, 口腔機能齊藤一誠/早崎治明新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生命科学口腔健康科学講座小児歯科学分野連絡先:〒951‐8514 新潟県新潟市中央区学校町通2番町5274はじめに 日常的な「お口ぽかん」(図1)は,臨床的には口唇閉鎖不全症として定義され,近年多くのマスメディアにも取り上げられている,口腔に認められる症状のひとつである.保護者が子どもの「お口ぽかん」に気づき注意しているところを見かけることがあるが,見た感じの印象が悪いというのが世間一般的なとらえ方であるように思われる.口呼吸は口を開けて行われているが「お口ぽかん」の状態は必ずしも口呼吸を行っているとは限らない.しかし,視覚的に気づきやすいことから「お口ぽかん」は口呼吸の有無のひとつの判断材料として役立てることができる.また,「お口ぽかん」と口呼吸との間に関連があること,現在は口呼吸でなくても,「お口ぽかん」は口呼吸の予備軍と考えられるため,今回は,お口ぽかん≒口呼吸として話を進めさせてもらう. 小児期の口呼吸は,歯列咬合や顎顔面の成長発育へ悪影響を及ぼすことが示唆され,さらに口呼吸と全身疾患との関連性が散見されるようになり,歯科領域だけでなく医学的,公衆衛生学的な観点からも近年着目されてきている.また,最近海外にて報告された定義1ではあるが,個々の原因はさまざまながら共通の病態(口呼吸)を示し,多くの弊害と関連性が示唆されているという特徴をもつことから,“口呼吸症候群”と定義して今後取り組んでいく必要があると筆者らは考えている.それでは,口呼吸症候群について,病因論,疫学,症状など過去の報告やわれわれが行った調査の結果などを含め述べていきたい.1.小児期の習慣的な口呼吸の弊害について まず,呼吸について整理しておきたい.一般的に,口呼吸とは鼻からの呼吸(鼻呼吸)が行えず,あるいはその割合が少なく,長時間にわたって口で呼吸することと定義されている2.小児の基本的な呼吸様式は鼻呼吸で,口は補助的な役割を演じる.鼻の機能としては,呼吸だけでなく嗅覚,加温・加湿,除塵機能があり,何らかの原因で鼻閉が生じると,一時的に口呼吸を行うことになる.アレルギー性鼻炎などで慢性的に鼻閉が継続すると,長期間の口呼吸の継続により口呼吸が習慣化していく.また,アデノイドや口蓋扁桃肥大などの鼻咽腔の形態的な通気障害でも口呼吸が惹起されると考えられる(図2).49the Quintessence. Vol.36 No.5/2017—0953

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