ザ・クインテッセンス 2017年5月
4/8

高齢者の根面う蝕をどう管理するか多歯介護時代のストラテジーFEATURE特 集 3Takeo SugaHow to Manage the Root Caries of the Elderlyキーワード: 根面う蝕,口腔管理,(要介護)高齢者菅 武雄鶴見大学歯学部高齢者歯科学講座連絡先:〒230‐8501 神奈川県横浜市鶴見区鶴見2‐1‐3はじめに この特集では,「多歯介護時代」という表現を用いることにした.その意味するところは,現代の,そしてこれからの高齢者は多くの歯を有しながら要介護状態になる,ということである.これは避けることのできない確定した未来である. 高齢期までご自身の歯を残せてよかったですね,と患者さんに声をかけてあげたい.よくがんばりました.すばらしい.それは本当の気持ち.だが,話はそれだけでは終わらない.実はここから始まる話が重要なのだ.誰にでも人生の終わりがくる.そして,その前にセルフケア困難な時期が必ずやってくる.どんなに気をつけていても,その日は必ずやってくるのである.日本人の死亡前の平均寝たきり期間は,なんと8.5か月もあるのである.この時期を無視して幸せな人生などありえないし,健康寿命の延伸議論など無意味にも感じられてしまう. 高齢者歯科の立場からの考え方を明確にしておく.それは「防げる病いは予防する.治せる病いは治療する.だが,治らないもの,終わりゆくものも見捨てない」という考え方である.リハビリテーション・マインドという言葉もあるくらいである.本稿では,高齢期の歯の問題を中心に「終わり」までも含めて考えてみたい.この構成は,相当な私見が混入する危険性を否定できないが,その責任は筆者個人にある.しかし,高齢者歯科医療,とくに在宅歯科医療の現場からの報告であることをご理解いただきたく,すべてをそのまま記することとした. 本稿のテーマは「高齢者の根面う蝕をどう管理するか」である.ここには3つのキーワードが含まれている.①高齢者,②根面う蝕,③管理の3つである(図1).Movieスマホで動画が見られる!(使い方:P3参照)P108,10994the Quintessence. Vol.36 No.5/2017—0998

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る