ザ・クインテッセンス 2017年10月号
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ドライマウス最前線正しく知ろう! ドライマウスと聞くと,唾液分泌の低下をイメージし,一般歯科診療においてはあまり関係ないと思われている方も多いのではないだろうか.しかし,ドライマウスとは,単に「唾液がない=唾液分泌低下症」や電解質の異常によって脳の口渇中枢が作用したことによる「水が飲みたい=喉が渇いた」という状況だけをさすのではなく,「口が乾いた感じや乾燥している状態や症状」の総称であり,オーラルフレイルの一症状ととらえられている.近年の高齢化によってオーラルフレイルをともなう高齢者が増加していることに加え,外来を受診する高齢者も増加していることから,一般歯科診療所においてドライマウス患者に出会う可能性は増加している. また,明らかにドライマウスを自覚して来院する患者は少数で,来院のきっかけとなった症状の原因やリスク因子が実はドライマウスであることは少なくない.たとえば代表的な症状として,口腔乾燥感,舌や粘膜の痛み,唾液のネバネバ感(粘稠感),口腔粘膜の発赤ややけどのような熱さ(灼熱感),感覚や味覚異常,適合良好な補綴装置に関する不適合の訴え,繰り返す歯冠形態修正の希望,急激な多発う蝕などがあるとともに,間接的に食欲不振,食べにくさや飲み込みにくさ(摂食機能低下),話しにくさなどの機能にドライマウスが関与している状況がある(図1)1.さらに,う蝕による審美障害や歯周疾患の増悪とともに口臭の悪化などから対人関係にまで影響し,ドライマウスの患者ではQOL(Quality of life)が低下することがある. ドライマウス患者の多くは,「口が乾いている」と訴えるのではなく,「口の中に膜が張っている」「ネバネバしたものが出てくる」「砂をかんでいるようだ」「唾液に味がある」「泡の唾液が出る」「唾液が邪魔で話せない」など通常では理解しがたい表現で訴える場合が多い.このとき,明らかな乾燥所見や目立った器質的変化を認めない場合では,患者の訴えが詳細であればあるほど歯科医療者は患者の症状を理解できず,いわゆる“気のせい”や“心理的な問題”としてしまう.しかし,実際は原因を見落とした不適切な対応のことが多く,患者と歯科医療者の信頼関係の悪化に繋がり,その後の歯科治療を困難にすることが少なくない. このような背景から,ドライマウスの適切な評価(診断)と対応が求められる.はじめに特 集 390the Quintessence. Vol.36 No.10/2017—2160

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