ザ・クインテッセンス 2017年12月号
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一般歯科へのマイクロデンティストリーの活用Seeing is believing:百聞一見不如はじめに 歴史的に顕微鏡歯科治療(マイクロデンティストリー)は,歯内療法や歯周治療から広まってきたが,その活用はその他の歯科治療においてももちろん可能で有効である.実際,ある分野の専門家から顕微鏡歯科を取り入れられた先生もいるし,またある治療がしたいから顕微鏡歯科を学んだという先生もいる.そして,これからどのように顕微鏡を日常の歯科臨床に利用していこうかと思案している先生もまだ多いと思われる. そこで,本稿では一般歯科のさまざまな場面における顕微鏡活用の実態を紹介したい.う蝕治療への活用 ここ数か月,生活歯の破折に出会う機会が増えている.咬頭が欠けている場合もあるし,裂溝に沿って亀裂が伸展して歯髄炎から抜髄になる,あるいは失活して根管治療が必要となる場合もある.失活歯の歯根破折がしばしば問題になるが,生活歯であっても歯根破折が生じることを考えると,失活歯の歯根破折は避けられない問題なのかもしれない.このように感じている最中に経験した症例を紹介する.症例1: 6のエナメル質クラックからの う蝕症例 患者は29歳の女性で,主訴は「左下の大臼歯部に冷たいものがしみる」という知覚過敏症状であった.詳細を図1a~lに示す. この症例の隣接面のエナメル質の崩壊は,エックス線写真でも,咬合面からのマイクロスコープによる観察でも診断不可能であった.光を当てて診査するトランスイルミネーション法は今回行わなかった.もし行っていればクラックが隣接面まで伸展していることは予測できたかもしれないが,エナメル質の崩壊まで診査することは困難であったろうと想像された. 辺縁隆線から隣接面へのクラックの伸展とエナメル質表層のう蝕(どちらが先かは検証不能である)によ木ノ本喜史Promotion of the Use of Microscope in General DentistryYoshifumi Kinomotoキーワード:マイクロスコープ,顕微鏡歯科,マイクロデンティストリー大阪府開業 きのもと歯科連絡先:〒564‐0072 大阪府吹田市出口町28‐1159the Quintessence. Vol.36 No.12/2017—2689

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