ザ・クインテッセンス 2018年1月号
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重篤なに対する合理的なフルマウスリコンストラクション重篤なに対する合理的なフルマウスリコンストラクションその理論的背景と修復法Tooth Wear症例70the Quintessence. Vol.37 No.1/2018—0070A Rational Approach to Full-Mouth Reconstruction of the Severely Worn DentitionKen’ichi Kobayashi,Keiichi Hosakaキーワード: tooth wear,咬合高径,中心位,フルマウスリコンストラクション割合が高い.若年者においては,清涼飲料の過剰摂 取,食酢の飲用,摂食障害がその原因として考えられる. Van't Spijkerら3は,tooth wear index(以下TWI)4を用い,重篤なTWに関し20歳で3%,70歳で17%と加齢とともに増加すると報告している(図2).なお,TWIはSmithら4により考案されたTWの重篤度を示すインデックスであり,0~4の5段階で評価する(表1). TW自体は,加齢とともに進行する一種の生理的現象である.しかし,現実には高齢者に重篤なTWが増大している3.その理由として,胃食道逆流症(gastro esophageal reux disease:GERD),薬の多剤投与による唾液減少,健康に良いとされる柑橘類の大量摂取,食酢の飲用などがある.しかし,いちばんの原因は,歯科医師および患者のTWに対する知識の欠如である.TWはう蝕ではないので,象牙はじめに 欧米では,1990年代からtooth wear(以下TW)に関心が寄せられており,臨床の場でも重篤なTW症例に対する審美的修復が発表されている.歯科においては,従来はう蝕と歯周病が歯を失わせる二大疾患として考えられてきた.しかし,今後これらの疾患は,歯科医学の進歩にともない減少していくものと考えられており,歯科医師が今後,治療の対象とすべきものとして,TWおよび知覚過敏が考えられている1. Smithら2は,TWの罹患率について98.9%と報告しており,そのうち5.1%がエナメル質を越えて象牙質に達していると述べている.図1は,象牙質までTWに罹患した歯面の年齢別の割合である.これをみると,26歳未満の若年者と56歳以上の高齢者の2 新春大特集SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018Fホール10/7(SUN)午前SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018Mホール10/7(SUN)午後小林賢一*/保坂啓一*1*東京医科歯科大学歯学部付属病院高齢者歯科学分野*1東京医科歯科大学大学院う蝕制御学分野代表連絡先:*〒113‐8549 東京都文京区湯島1‐5‐45

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