ザ・クインテッセンス 2018年1月号
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高齢者の食事と栄養を考える104the Quintessence. Vol.37 No.1/2018—0104岩佐康行Thinking about Diet and Nutrition of the ElderlyYasuyuki Iwasaキーワード:高齢者,食事指導,栄養,咀嚼能力社会医療法人原土井病院歯科/摂食・栄養支援部連絡先:〒813‐8588 福岡県福岡市東区青葉6‐40‐8特 集 3はじめに割を考えてみたい.なお,食事は国や地域によって事情が大きく異なることから,本邦による研究結果を中心に,より現場に近い情報提供を心がけた. 超高齢社会を迎えて,歯科治療は,欠損補綴や歯の保存を重視するものから,食べる・話すといった機能を重視するものに変わりつつある.このため,新しい分野である摂食機能療法(摂食嚥下リハビリテーション)が注目されているが,従来から行われてきた治療が重要であることに変わりはない.ただ,医療に健康長寿や生活の質(QOL)向上が期待されるようになったことで,歯科治療のアウトカムの1つに栄養状態の改善が考えられるようになったことが,これまでとの違いである.今年度には,特定保健指導(注1)1における歯科医師の食生活改善指導の要件が緩和されることもあり,この分野における歯科からのアプローチが期待される. 本稿では,主に自立高齢者の咀嚼と食事・栄養の関係について検討し,健康長寿に貢献する歯科の役(注1)特定保健指導とは(参考文献1より抜粋)・特定健診・保健指導は,運動・食事・喫煙などに関する不適切な生活習慣が引き金となり,肥満,脂質異常,血糖高値,血圧高値から起こる虚血性心疾患,脳血管疾患,糖尿病等の発症・重症化を予防し,医療費を適正化するため,高齢者の医療の確保に関する法律に基づき,保険者が共通に取り組む保健事業である.・特定保健指導は,保険者が健診結果により内臓脂肪の蓄積に起因する糖尿病等のリスクに応じて対象者を選定し,対象者自らが健康状態を自覚し,生活習慣改善の必要性を理解した上で実践につなげられるよう,専門職が個別に介入するものである.・歯科医師が特定保健指導における食生活の改善指導を行う場合,食生活改善指導担当者研修の受講(30時間)が要件となっているが,H30年度より,この研修の受講は要しないこととなる.SPEAKER’S ARTICLE第8回 日本国際歯科大会2018DH第 ホール210/7(SUN)午前

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