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国際咬合シンポジウム2017 抄録


 

9:10~9:40

咬合は変わったか?

Have Concepts of Occlusion been changed?

古谷野 潔 Kiyoshi KOYANO

九州大学大学院歯学研究院インプラント・義歯補綴学分野

【略歴】

1983年 九州大学歯学部卒業
1987年 九州大学大学院歯学研究科博士課程修了(歯学博士)
1987年 九州大学歯学部附属病院助手
1991年 文部省在外研究員(米国UCLA 客員助教授:1993年まで)
1997年 九州大学歯学部教授
1999年 九州大学総長補佐(2001年まで)
2003年 九州大学歯学部附属病院長(九州大学病院副病院長)(2008年まで)
2011年 日本学術会議会員
2012年 九州大学総長特別補佐(2014年まで)

日本口腔インプラント学会常務理事,日本顎関節学会理事長,日本補綴歯科学会元理事長,International College of Prosthodontists元会長,Asian Academy of Osseointegration元会長,Asian Academy of Prosthodontics元会長,Journal of Oral Rehabilitation: Associate Editor,International Journal of Prosthodontics: Associate Editor,Journal of Odontology: Associate Editor


【講演内容】

 本講演ではまず,咬合理論で取り上げられる中心位,咬合様式とアンテリアガイダンス,咬頭嵌合位と中心位などの要素が臨床的に有効かについて,文献レビューに基づいて検証する.
 従来の咬合理論では,上記の咬合要素について基準が設定され,この基準を満たしていないと病的(要治療)と判断される.しかし,既定の基準を満たしていなくても,顎口腔系にとくに問題なく過ごしていて,とくに治療が必要とは考えられないヒトはたくさん存在する.
 したがって,咬合については正常と異常あるいは理想的と病的の2つに分けるのではなく,

  • 1.理論的理想咬合,
  • 2.生理的咬合,
  • 3.非生理的咬合,
  • 4.治療的咬合,

の4つに区別して考える必要がある.
 咬合治療の必要性が考えられる場合には,まず治療開始

前に,患者の咬合が4つの区分のうちのどれに当たるのかを判断する.理論的理想咬合でなかったとしても,生理的咬合と判断されれば咬合状態に対する治療的な介入の必要はない.非生理的咬合と判断された場合には,治療が必要となることもあるので,治療的介入が必要かどうかについて判断をすることになる.そのうえで,咬合治療を行う場合には,咬合に関する治療の目標を,

  • 1.咬合を維持する,
  • 2.咬合を修正する,
  • 3.咬合を再構成する,

の3つに仕分けし,どの目標を選択するかを明確にして臨む必要がある.
 いずれにしろ,咬合治療は歯の喪失,組織の障害,機能障害,さらには患者の希望や満足度など,患者のニーズに合わせて行うべきであって,患者の口腔内状態を術者の信じる理論(理論的形態)に合わせるために行うべきではない.


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9:40~10:50

科学的視点から現代咬合の基本を考える
(基礎・理論編)

Reconsidering the Basics of Occlusion from the Point of
Scientific View:the Fundamentals & Theories

Martin GROSS マーティン・グロス

イスラエル開業

【略歴】

1971年,London大学Guys Hospital歯学部において歯科医師学士号(BDS),歯科医師修士号(LDS)取得.1974年,Northwestern歯学部(シカゴ)において補綴学の修士号を取得.その後,Guys Hospitalの研修医となり,Londonで開業.1978年~2009年までTAU Dental schoolの補綴学教室および咬合学教室の教員を務める.補綴学の専門医.口腔リハビリテーションのAssociate Clinical Professor.1997年~2009年まで,TAUの卒後専門医プログラムの主任教官.2011年~2013年,International College of Prosthodontistsの会長を務める.現在は,開業医の傍ら,種々の臨床研究に携わっている.


【講演内容】

 咬合の理論と臨床応用に対する考え方は,長年わたって変更されてきた.「基本」といわれるたくさんの事項は,その時々の独断的な意見(ドグマ)や,その時々で多くの人に受け入れられた認識に基づくものが多い.咬合には,

  • ①臼歯部咬合支持,
  • ②垂直的咬合高径,
  • ③偏心運動時の誘導,

の3つの基本的要素があり,これらを深く掘り下げる必要がある.
 本講演では,これらの3つにおける重要なパラダイムの変化と不要なドグマについて解説してみたい.上述した3つの要素に対する臨床的疑問については,天然歯に対する咬合付与,またインプラントに対する咬合付与の双方について触れる.
 補綴治療の原則を踏まえた現在のエビデンスベースな考え方には,臼歯部咬合支持の要素,咬頭嵌合位での咬合接触,顎運動記録,下顎位,垂直的咬合高径,姿勢の順応と記録,咬合高径の変化,そして偏心運動時の誘導といった事項が挙げられる.不正咬合,咬合の不正な関係,咬合干渉と顎関節症(TMD)に対する考え方には変化がみられる.それゆえに,個々の症例で決定すべき因子を踏まえた選択的な偏心運動時の誘導,選択的な臼歯離開咬合についても解説する.相互保護とアンテリアディスクルージョン(前歯による臼歯離開)に対する考え方を,最新の知識に照らして評価することとなる.

【Abstract】

 Knowledge of the theory and clinical and application of occlusion has evolved over the years. Many of the “Basics” were often based on dogmas and accepted paradigms that have changed.
 The 3 basic components of the occlusion, 1. The posterior support 2. Vertical dimension of occlusion and 3. The excursive guidance will be covered in depth.
 In each of these we see significant change in paradigms and redundant dogmas which will be addressed in this presentation. Clinical questions on all 3 components will be covered regarding restoration of occlusion for both teeth and implants.
 Current evidence based concepts with restorative principles are presented for:posterior support units, intercuspal contact, jaw registrations, mandibular posture, occlusal vertical dimension, postural adaptation and registration, changing vertical dimension and excursive guidance. Concepts of malocclusion and the relation of occlusal deficiencies and occlusal interferences to TMDs have changed. Consequently, new paradigms of selective excursive guidance and selective disclusion based on the individual clinical determinants are presented. Concepts of mutual protection and anterior disclusion will be evaluated in the light of current knowledge.

15:20~16:20

症例に応じた咬合付与を考える(臨床編)

Considering the Occlusion in the Individualized Treatment
Approach:its Clinical Aspects


【講演内容】

 以下は,咬合治療の5つの代表的な臨床応用例である.本講演では,これらの臨床例と現代の治療指針について述べる.
1)Ⅰ級の治療
 咬合調整の禁忌と合理的な咬合調整法,顎関節症(TMD),咬合干渉,相互保護,アンテリアディスクルージョン(前歯による臼歯離開)といった従来の考え方(パラダイム)と比較しての,臼歯部支持と垂直的咬合高径および偏心運動時の誘導.選択的な偏心運動時の誘導と選択的な離開咬合.
2)Ⅱ級,Ⅲ級ほかⅠ級以外の治療
 臼歯部咬合支持の原則,顎運動記録,選択的な誘導および個々の臨床的決定因子による影響.
3)歯周病罹患歯に対する治療
 その原則と現在の考え方,咬合性外傷,咬合性外傷と歯周炎,連結,咬合調整,新しい治療法.歯周補綴とインプラント支持による補綴治療.
4)摩耗した歯列とブラキシズムのある患者への治療
 「いつ」「どのように」という点での,現在のブラキシズムに対する考え方.咬合と補綴治療の原則.重篤なブラキサーの過度な摩耗歯列に対する治療の危険性の精査.
5)インプラント支持による補綴治療の原則
 単独歯,Ⅰ級,Ⅱ級,Ⅲ級それぞれの治療症例の提示.無歯顎症例における咬合の原則,個々の臨床的決定因子,サージカルガイドとCAD/CAMを用いたコンピュータによる補綴治療計画.

【Abstract】

 This paper covers 5 major clinical applications of occlusal rehabilitation with clinical cases and current therapeutic concepts.
1. Restoring the class I occlusion. Posterior support, vertical dimension and excursive guidance. Selective excursive guidance and selective disclusion compared with traditional paradigms of anterior disclusion and mutual protection Occlusal interferences and TMDs, rational for occlusal adjustment indications and contraindications.
2. Restoring class II Class III and other non-class I occlusions. Principles of posterior support, jaw registrations, selective guidance and the influence of individual clinical determinants.
3. Restoration of periodontally compromised dentitions. Principles and current concepts, occlusal trauma, periodontitis and occlusal trauma, splinting, occlusal adjustment, new treatment modalities. Periodontal prosthesis and implant supported restorations.
4. Restoration of the worn dentition and bruxism. Bruxism current concepts, how and when to treat. Occlusal and restorative principles. Assessing the dangers of restoring severely worn dentitions for severe bruxers.
5. Principles of restoring implant supported restorations. Single tooth, Class I, Class II and Class III cases presented. Fully edentulous case presentations, occlusal principles, individual determinants and prosthetic guided computer treatment planning, surgical guidance and CAD/CAM cases.


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11:00~12:00

咬合と全身のかかわりについて(基礎・理論編)

The Occlusal-Systemic Connection:the Fundamentals
& Theories

筒井照子 Teruko TSUTSUI

福岡県開業 筒井歯科・矯正歯科医院

【略歴】

1970年 九州歯科大学卒業
1970~75年 九州歯科大学矯正学教室在籍
1975年 北九州市八幡西区にて開業
1980年 日本矯正歯科学会専門医・認定医

昭和大学歯学部兼任講師,日本包括歯科臨床学会顧問,筒井塾・咬合療法研究会・JACD主宰 Editor


【講演内容】

 1972年に出版された書籍『臨床家のためのオクルージョン』のなかで,石原寿郎先生が「2つの咬合論(生理学的咬合と補綴学的咬合)はもっと先に進んで1つになるもの」とサジェスチョンしてくださった.
 前者は,口腔が壊れた原因を取り除き,できるだけ体を元に戻す.その後に,後者の理論で自然治癒しない歯や,欠損した歯列を人工物で補うことだと解釈している.人は良くない生活習慣や咬合不正,顎位の偏位などで体全体の

バランスを崩してしまう.生理学的咬合で体のバランスを回復した後,補綴学的咬合で修復物を製作する.したがって,両者の下顎位を異なって捉えている.前者の下顎位は「全身のなかでの最適な下顎位」であるのに対し,後者は生体を咬合器に置き換える「上顎位に対する下顎位」である.「2つの下顎位」として分けて考える.本講演では,このことをご理解いただけたら幸いである.

14:00~15:00

SMC分類に沿った各種治療の実際(臨床編)

Occlusal Rehabilitation in accordance with SMC
Classification:its Clinical Aspects


【講演内容】

 歯科臨床には種々の分類があるが,それらのほとんどは修復のための分類である(Dentistryの分類).一方,生理学的咬合で口腔が壊れた道筋を探す場合,もって生まれた個体差によって,おおまかな一定の法則があると考えている.
 Ⅱ級とⅢ級では,同じ加齢や態癖などの崩壊を加速させる因子が加わったとしても崩壊の方向は逆方向になる.
 そのため,私は口腔崩壊の道筋の違いを類型化したものを「Stomatologyの分類―S.M.C分類―」と名付けた.SはSkeletal Pattern:骨格型,MはMuscle Pattern:筋肉型,

CはChewing Pattern:咀嚼型である.そして①Ⅱ級,②Ⅲ級,③短顔(強筋),④長顔(弱筋),⑤斜め卵型と⑥逆三角型のChewingの8つの類型を参考に仮説を立て,診査を絞り込むと,診断にいたるスピードが格段に速くなる.
 すなわち,パターン認識する発見的問題解決法の診断法である.個体差による崩壊のパターンを裏返しすれば治癒の方程式となる.スプリント療法も矯正治療,修復治療も手段が異なるだけで方向性は同じに考えている.


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13:00~13:30

アンテリアガイダンスと犬歯誘導の重要性

The Importance of Anterior Guidance and Canine
Guidance

山﨑長郎 Masao YAMAZAKI

東京都開業 原宿デンタルオフィス

【略歴】

1970年 東京歯科大学卒業
1974年 原宿デンタルオフィス開業 現在に至る

東京SJCD最高顧問
SJCDインターナショナル会長


【講演内容】

 歯科治療のなかでもっとも難解な分野は咬合である.現在においても,まださまざまな論争が起こっており,解決していない部分も多々ある.また,インプラントが欠損修復治療に組み込まれてきたことにより,いっそう咬合が注目されてきた.それは精密な接触を与えないと,インプラントは沈下による補償がされないためである.
 咬合の大きな要件にはアンテリアガイダンスおよび咬合高径の2つが挙げられるが,本講演では,より注目度が高いアンテリアガイダンスについて,次の3点を中心に検討してみたい.
①アンテリアガイダンスの重要性.
②アンテリアガイダンスの決定要素.

③アンテリアガイダンスの臨床的構築方法.
 そのうえで,難解と思われる咬合について臨床的な見地からいかに治療のなかに組み込むか,また,現在までの研究からわかっていること,わからないことを明確化し,科学的根拠に裏打ちされた咬合の原則を,咬合再構成の治療順序とともに検討し解説してみたい.さらに,インプラントの咬合についても,現在臨床で行っている考え方を併せて述べたい.
 いずれにしても,臨床の各々の症例において咬合の付与は微妙に変化し,応用問題になる.とくにアンテリアガイダンスにはさまざまなパターンが存在し,問題をよりいっそう複雑にしている.本講演がそれらをひも解く糸口となることを期待している.


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13:30~14:00

可撤性補綴装置を用いた補綴治療における咬合
を考える(RPDとIODを中心に)

Consideration of Occlusion for Prosthetic Treatment
using Removable Prosthesis: mainly on RPD and IOD

前田芳信 Yoshinobu MAEDA

大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建学講座有床義歯補綴学・高齢者歯科学分野

【略歴】

1977年 大阪大学卒業
1981年 同大学院歯学研究科修了(歯科補綴学第二講座)
1988~1989年 ブリティッシュコロンビア大学 客員
1997年 同大学歯学部附属病院口腔総合診療部教授
2007年 同大学歯学研究科顎口腔機能再建学講座教授

International College of Prosthodontists(President 2012-2013)
日本補綴歯科学会(指導医,専門医)
日本口腔インプラント学会(理事,指導医,専門医)
日本スポーツ歯科医学会(理事,認定医)


【講演内容】

 可撤性の補綴装置にどのような咬合を付与すべきなのかに関して数多くの考え方が提案されてきているが,それらには科学的根拠はあるのだろうか?
 それらの多くは無歯顎に対するコンプリートデンチャーに与える咬合様式が基本となっている場合が多いが,パーシャルデンチャーやインプラントオーバーデンチャーにおいても同様に考えるべきなのだろうか,あるいは,同様に

考えることができるのだろうか?
 また,それらは機能回復だけでなく,支台歯やインプラントを長期に維持し,顎堤の吸収を抑制するうえでも効果があるのだろうか?
 本講演では,このような点について,臨床データも含めて考察してみたい.


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